はじめに:現代社会の隠れた脅威、マイクロプラスチック
私たちの身の回り、そして体内にも知らず知らずのうちに忍び寄る「マイクロプラスチック」。その微小な存在は、血栓形成促進や臓器不全の誘発など、健康への悪影響が懸念されており、世界中で大きな問題となっています。環境中だけでなく、人体の健康にも深く関わるこの問題に対し、私たちはどのように向き合っていけば良いのでしょうか。
岡山大学が切り開く新たな道:植物発酵エキスの驚くべき力
国立大学法人岡山大学の杉本学准教授率いる資源植物科学研究所と、株式会社機能性食品開発研究所の共同研究チームは、このマイクロプラスチック問題に光を当てる画期的な発見をしました。
研究チームは、植物発酵エキスが人工胃液や人工腸液といった消化管環境下で、マイクロプラスチックと結合することを見出したのです。特に注目すべきは、人工腸液中(中性)よりも人工胃液中(酸性)で、植物発酵エキスがマイクロプラスチックとより高い結合率を示した点です。これは、植物発酵エキスに含まれる特定の物質が、酸性条件下で電気を帯び(荷電し)、マイクロプラスチックとイオンの力で引き合い結合している可能性を示唆しています。

この研究成果は、2025年8月13日に食品科学研究雑誌「Current Nutrition and Food Science」のResearch Articleとして掲載されました。
この発見が解決する課題:私たちの健康をどう守るか
今回の発見は、消化管からマイクロプラスチックが体内に吸収されるリスクを低減し、その体外への排出を促進する可能性を秘めています。もし植物発酵エキスが消化管内でマイクロプラスチックを捕らえ、そのまま体外へ運び出してくれれば、私たちの健康を守る上で非常に大きな一歩となります。
導入のメリット・デメリットと未来への展望
メリット:健康とビジネスの新たな可能性
この研究が進展し、実用化されれば、以下のようなメリットが期待されます。
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健康リスクの低減: 日常的に摂取することで、体内へのマイクロプラスチック吸収を抑え、長期的な健康維持に貢献するでしょう。
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自然由来の解決策: 植物発酵エキスという食品由来の成分であるため、安全性への期待が高く、安心して取り入れられる可能性があります。
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予防医学への貢献: 病気になる前の段階で、マイクロプラスチックという潜在的なリスク要因に対処できる、新たな予防医学的アプローチとなるかもしれません。
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競争力強化と新規事業創出: この技術を応用した機能性食品やサプリメントの開発は、健康志向が高まる市場において、企業にとって大きな競争優位性を確立し、新たなビジネスチャンスを生み出すでしょう。例えば、健康食品メーカーや製薬会社は、この研究を基盤とした新製品で、生産性向上やコスト削減(将来的な医療費削減)に貢献できる可能性があります。
デメリット・課題:実用化までの道のり
一方で、実用化に向けてはいくつかの課題も存在します。
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人体での効果検証: 現在は人工消化液での実験段階であり、実際に人体で同様の効果が得られるかの臨床試験が不可欠です。
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コストと継続性: 製品化された場合のコストや、効果を維持するための継続的な摂取費用が、消費者の負担とならないかという点も考慮が必要です。
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効果の個人差: 人体での効果には個人差が生じる可能性があり、全ての人に一律の効果が期待できるとは限りません。
今後の展望
今後は、動物実験や人体での臨床試験を通じて、植物発酵エキスのマイクロプラスチック排出効果と安全性を詳細に検証していくことになります。また、最適な摂取方法や形態(飲料、サプリメントなど)、さらに幅広い種類のマイクロプラスチックへの対応についても研究が進められるでしょう。
スタートアップが学ぶべき視点:社会課題解決型イノベーションのヒント
今回の岡山大学と株式会社機能性食品開発研究所の連携は、スタートアップ企業にとっても多くの学びを提供します。
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社会課題への着目: マイクロプラスチックのような、グローバルかつ喫緊の環境・健康課題に早期から着目し、解決策を模索する姿勢は、持続可能なビジネスを築く上で不可欠です。
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産学連携の有効性: 大学の持つ基礎研究力と、企業の持つ開発力や市場への展開力を組み合わせることで、単独ではなし得ない革新的なソリューションを創出できます。これは、外注費削減や研究開発の効率化にも繋がるでしょう。
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既存資源の再評価: 植物発酵エキスという、これまでも健康食品として利用されてきた身近な素材から、新たな機能や価値を見出す視点は、競争力強化に繋がるユニークな製品開発のヒントになります。
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長期的な視点での投資: 成果が出るまでに時間がかかる研究分野への忍耐と、将来の大きなリターンを見据えた長期的な投資の重要性を示しています。
まとめ:健康と地球の未来のために
今回の岡山大学の研究成果は、マイクロプラスチックという現代社会の大きな課題に対し、自然由来の新たな解決策の可能性を示しました。資源植物科学研究所の杉本学准教授は、「発酵食品による免疫力向上効果は、腸内で増えた善玉菌が生産する短鎖脂肪酸が免疫グロブリンの働きを助け、免疫の過剰反応を制御するTreg細胞を増やすなど、その機能が徐々に明らかにされています。本研究成果により、植物発酵エキスに含まれるマイクロプラスチックを体内から排除する物質が解明される手がかりになると期待しています。」とコメントしています。

私たちの健康と、そして地球の未来のために、岡山大学の今後の研究活動に大いに期待が寄せられます。
関連情報
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論文情報
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論文名:Potential of Fermented Plant Extract for Removing Microplastics in Artificial Gastric and Intestinal Juices
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掲載紙:Current Nutrition and Food Science
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詳しい研究内容について
- 植物発酵エキスがマイクロプラスチックを体外へ排除する可能性を確認:https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20251216-3.pdf
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関連機関
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岡山大学資源植物科学研究所:https://www.rib.okayama-u.ac.jp/
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株式会社機能性食品開発研究所:https://ffc-okayama.com/
