旅の定義が変わる2026年:求められるのは「つながり」と「深い体験」
パンデミックを経て、私たちの旅に対する価値観は大きく変化しました。単なる目的地への移動や滞在だけでは満足できない。いま、旅行者は感情に響く体験、人との温かい「つながり」、そして自分自身の内面を見つめ直す「意味」のある旅を求めています。
世界的ホスピタリティリーダーであるマイナー・ホテルズが発表した「2026年 旅行トレンドレポート:Travelling Deeper: A Search for Lasting Connection」は、この新たな旅の潮流を鮮明に浮き彫りにしています。このレポートは、他者、自分自身、そして旅の目的地との多様な「つながり」のあり方を深く掘り下げています。

マイナー・インターナショナル グループCEOのディリップ・ラジャカリア氏は、「現代の旅行者が求めているのは、単なるデスティネーションではなく、物語や人との「つながり」、そして「意味」です」と語り、ホテルが単にサービスを提供する場から、ゲストが旅を通じて「意味」を見出す手助けをする存在へと役割がシフトしていることを示唆しています。
2026年の旅行市場は楽観的!それでも見過ごせない変化の兆し
経済の不確実性が続く中でも、旅行への意欲は衰えを知りません。レポートによると、調査回答者の94%が「今後1年間で、現在と同程度、もしくはそれ以上旅行する」と回答しており、そのうち約3分の1は2025年よりも多くの旅行を計画しています。旅行支出についても、94%が「2025年と同額または増額」を見込んでおり、特にラグジュアリー層では61%が旅行頻度の増加を予想しています。
このデータは、旅行市場の堅調な成長を示唆していますが、その内実は大きく変化しています。
1. 「量より質」の旅が生産性向上とコスト削減の鍵
旅行者は、単に多くの場所を訪れることよりも、個人にとって価値をもたらす「質の高い体験」を重視する傾向を強めています。
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費用の妥当性(手頃さ): 53%の回答者が旅行計画の最重要要因として挙げており、賢い支出が求められています。
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直前予約の増加: 53%が3ヶ月以内に予約しており、柔軟な計画調整や状況を待つ姿勢が見られます。これは、旅行者にとっての「ROI(投資価値)」が、単なる価格だけでなく、タイミングや体験の質を含めた総合的な価値判断に基づいていることを示唆しています。
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ホテル公式サイトの活用: 旅行者の80%がホテル公式サイトを利用しており、個人からの推薦(35%)やオンライン旅行代理店(OTA)(29%)を上回っています。これは、ホテルが直接顧客との関係を築き、パーソナライズされた情報提供や予約体験を提供することで、中間コストの削減と顧客ロイヤルティの向上を実現できる大きなチャンスです。
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生成AIチャットボットの台頭: 12%がすでに利用しており、新たなテクノロジーが旅行計画に浸透し始めています。これは、業務の効率化と顧客体験の向上を両立させる可能性を秘めています。
2. 他者との「つながり」を求める旅:競争力強化のヒント
2026年の旅は、誰かと「共に過ごす時間」がキーワードとなります。
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多様な旅の仲間: ほぼすべての回答者がパートナー(66%)、家族(46%)、友人(32%)と一緒に旅をする予定です。
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質の高い時間の追求: 86%がレジャー旅行で最も重視しており、「食事を共にすること」(67%)、「リラクゼーション」(54%)、「文化的なアクティビティ」(55%)が共有体験として選ばれています。
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プライベート重視のアクティビティ: 回答者の過半数(56%)が、グループアクティビティは同行者のみで楽しみたいと回答。これは、プライベート感を重視した体験提供が、顧客満足度を高め、競争優位性を築く上で重要であることを示しています。
3. 自分自身との「つながり」を深める旅:ウェルネスで生産性向上
グループでの旅においても、個人は心身のリチャージを求めています。
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デジタルデトックスの重要性: 71%がテクノロジーやソーシャルメディア、仕事から距離を置くことが個人のウェルビーイングに重要だと考えています。
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ウェルネスへの関心: 44%が旅行にウェルネスやマインドフルネスをより多く取り入れる予定で、すでに実践している層では73%にまで高まります。「スパトリートメント」(75%)、「自然体験」(59%)、「フィットネス」(49%)が具体例として挙げられています。
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ひとりの時間の確保: 37%が他者と旅行中であっても、自分自身の時間を確保しています。これは、旅行が心身のリフレッシュを促し、結果的に日々の生産性向上に繋がるという認識が広まっていることを示唆します。

4. 「食」を通じた文化とのつながり:地域経済活性化と競争力強化
食は、文化を知るための最も重要な入り口です。
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食が文化理解の鍵: 85%の旅行者が食を重視しており、これに歴史的建築(71%)、自然(65%)が続きます。
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没入型体験の重視: 83%が現地を深く体感する没入型体験がデスティネーション選択に影響すると回答。
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自由な探索とガイド付きツアー: 79%が自分のペースで探索するスタイルを好み、44%がガイド付きツアーでその土地の暮らしや文化に触れたいと考えています。
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再訪意欲: 本物志向の体験により、76%が個人的な絆を感じたデスティネーションを再訪したいと回答しています。これは、地域経済の活性化と、旅行事業者にとってのリピーター獲得に直結する重要な要素です。
5. 「価値観」が形づくる責任ある旅:ブランドロイヤルティと競争優位性
ホテルのサステナビリティへの取り組みは、宿泊先選択に大きな影響を与えます。
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サステナビリティへの配慮: 47%がホテルのサステナビリティ方針が選択に影響すると回答。都市型ホテル(53%)でもデスティネーションリゾート(54%)でも、環境・文化・社会的に配慮した取り組みがデスティネーションとのつながりを深めると考えられています。
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意識的な選択の促進: 旅行者は、意識的な選択や参加型のサステナビリティについて学びを提供し、行動を後押しするブランドを求めるようになっています。これは、ブランドイメージの向上と新たな顧客層の獲得に繋がり、長期的な競争優位性を確立します。
スタートアップが学ぶべき「未来の旅」のヒント
このレポートは、旅行業界の既存プレイヤーだけでなく、スタートアップ企業にとっても多くの示唆を与えています。
1. 超パーソナライズされた体験の提供
画一的なサービスではなく、個々の旅行者のニーズや価値観に合わせた「深い体験」をデザインするサービスが求められます。AIを活用したレコメンデーションや、旅行者の興味関心に基づいたオーダーメイドの旅程提案は、顧客満足度を高め、外注費削減にも貢献するでしょう。
2. ウェルネス・マインドフルネス分野の強化
デジタルデトックス、自然の中でのリトリート、瞑想、ヨガ、フィットネスなど、心身のリフレッシュに特化したプログラムや施設は、現代人の生産性向上への意識に応えるものです。この分野での独自性を持つスタートアップは、大きな成長機会を掴めます。
3. 多世代・グループ旅行に特化したソリューション
家族や友人との「質の高い時間」を重視するトレンドに対応し、プライベート感を重視したグループアクティビティや宿泊プランの企画・提供は、新たな市場の開拓に繋がります。予約システムや現地での体験手配をスムーズにするテクノロジーも有効です。
4. 地域文化との深い連携と「食」の体験価値向上
食文化体験、ローカルガイドによる地域探索、伝統工芸体験など、その土地ならではの「本物」に触れる機会を提供することは、旅行者の再訪意欲を高めます。地域事業者との連携は、新たな収益源を生み出すだけでなく、地域社会への貢献にも繋がります。
5. サステナビリティを核としたブランド構築
環境負荷の少ない旅行、地域コミュニティへの貢献、文化遺産の保護など、サステナビリティを事業の根幹に据えることで、価値観を共有する旅行者からの強い支持とブランドロイヤルティを獲得できます。透明性のある情報開示と、参加型プログラムの提供が重要です。
6. データとAIを活用した効率的な運営
ホテル公式サイトでの直接予約を促進するUI/UXの改善、生成AIチャットボットによる顧客対応の自動化は、運用コストの削減と顧客体験の向上を両立させます。これにより、人的リソースをより付加価値の高いサービス提供に集中させることが可能になります。
新しい旅の形を取り入れるメリット・デメリット
メリット
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顧客ロイヤルティの向上: 「深い体験」と「つながり」を重視するサービスは、旅行者との感情的な絆を深め、リピーターを増やします。
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高付加価値化と収益性向上: 量より質を求める旅行者は、価値ある体験に対してより高い支出を惜しみません。
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ブランドイメージの向上: サステナビリティや地域貢献への取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を強化し、ポジティブなブランドイメージを確立します。
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新たな市場の開拓: ウェルネス、多世代旅行、没入型文化体験など、多様化するニーズに応えることで、これまでリーチできなかった顧客層を獲得できます。
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業務効率の向上: AIやデジタルツールの活用により、予約や顧客対応の自動化が進み、人件費や外注費の削減に繋がります。
デメリット・課題
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初期投資とビジネスモデルの転換: 新しい体験やテクノロジーの導入には、相応の投資と既存のビジネスモデルからの変革が必要です。
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「本物志向」への対応: 旅行者は表層的な体験ではなく、真に地域や文化に根ざした「本物」を求めています。これを提供するには、深いリサーチと地域連携が不可欠です。
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競合の激化: 価値ある体験を提供する動きは業界全体で加速するため、独自性や差別化を常に追求する必要があります。
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情報発信の重要性: 旅行者の価値観に合致するサービスを提供していても、それが伝わらなければ意味がありません。デジタルマーケティング戦略の強化が求められます。
まとめ:旅行業界の未来を切り拓くために
2026年の旅行トレンドレポートは、旅行が単なる移動手段から、自己成長、他者との絆、そして地域文化との深い交流を促す「人生を豊かにする体験」へと進化していることを明確に示しています。
旅行業界の事業者、特にスタートアップ企業は、この潮流をチャンスと捉え、
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旅行者の「つながり」と「深い体験」への渇望に応える
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テクノロジーを活用して効率とパーソナライゼーションを両立させる
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サステナビリティを事業の核に据える
といった戦略を積極的に取り入れることで、生産性向上、コスト削減、競争力強化を実現し、持続可能な成長を遂げることができるでしょう。今こそ、顧客の心に響く、温かく意味のある旅の提供を通じて、旅行業界の新しい未来を共に築いていく時です。
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https://media.minorhotels.com/en-GLO/258456-minor-hotels-travel-trends-report-2026/
