イベント業界の未来を拓く!廃棄物ゼロを目指すサーキュラーエコノミーの可能性と実践事例
イベントは私たちに感動や喜びを与えてくれる一方で、その準備や開催後には大量の廃棄物が発生するという課題を抱えています。しかし、もしイベントの設計段階から「捨てない」ことを考え、廃棄物を限りなくゼロに近づけることができたらどうでしょうか?
経済産業省が大阪・関西万博で開催した体験型催事「サーキュラーエコノミー(CE)研究所」は、まさにその問いに答える画期的な実証実験を行いました。このイベントでは、なんと施工資材の資源循環率99.7%という驚異的な数値を達成。今回は、この成功事例から、イベント業界が抱える悩みをどう解決できるのか、そして持続可能なビジネスモデル構築へのヒントを探ります。
「捨てない」デザインがイベントを変える!サーキュラーエコノミー研究所の挑戦
「サーキュラーエコノミー研究所」は、2025年9月23日から29日までの期間、大阪・関西万博のEXPOメッセ「WASSE」にて開催され、約5.8万人が来場しました。この催事の最大のテーマは、従来の「作って・使って・壊す」という直線型経済(リニアエコノミー)の発想から脱却し、「つくる段階から循環を考える」というサーキュラーな設計を導入することでした。

来場者は、日本の先進的なサーキュラーエコノミーの取り組みや技術を体験し、資源循環への認知を広げる貴重な機会となりました。子供たちが展示を楽しむ姿も見られ、次世代への意識啓発にも繋がったことでしょう。

驚異の資源循環率99.7%を達成した秘訣
目標値99.6%を上回る99.7%という高い資源循環率を達成できたのは、徹底した「捨てない」設計思想に基づいた取り組みがあったからです。
主な取り組みは以下の通りです。
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レンタル品・再利用品の積極活用: 資材の多くは、新たな製造を伴わないレンタル品や再利用品が採用されました。これにより、新規資源の消費を大幅に削減。
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リサイクルしやすい資材選定: 新規に使用する資材についても、マテリアルリサイクル(再生利用)しやすいものが厳選されました。例えば、紙管や段ボール材なども、その後の循環を考慮して選ばれています。

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事前設計への組み込み: 資材の選定だけでなく、素材検討段階から「どこで、どのようにリサイクルするか」が事前に計画に組み込まれました。これにより、廃棄を前提としないイベント設計が実現しました。
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デジタル管理によるトレーサビリティシステム: イベント終了後には、資材ごとに分別・計量を実施。各資材にQRコードを付与し、回収から再資源化までのプロセスをデジタルで管理しました。これにより、資源の行方が「見える化」され、精度の高い循環管理が可能になりました。

これらの取り組みの結果、イベントの施工資材の「入口(投入)」から「出口(循環ルート)」までが可視化され、99.7%という高い資源循環率が達成されました。

環境負荷を大幅削減!CO2排出量17.74t減のインパクト
今回の実証実験では、資源循環率の高さだけでなく、環境負荷の低減においても大きな成果を上げました。一般的なイベントと比較して、CO2排出量を17.74t削減することに成功。これは、500mlペットボトル約1,740万本分の体積に相当する量です。
この数値は、サーキュラー型のイベント運営が、地球温暖化対策に大きく貢献できる可能性を示しています。環境への配慮が不可欠な現代において、イベント業界の新たなスタンダードを築く一歩と言えるでしょう。
導入事例から学ぶメリットと課題
導入のメリット
サーキュラーエコノミー型イベント運営には、環境面だけでなく、ビジネス面でも多くのメリットがあります。
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環境負荷低減と企業イメージ向上: 環境に配慮したイベント運営は、企業のSDGs達成への貢献を明確にし、社会的な評価やブランドイメージの向上に直結します。これは、顧客やパートナーからの信頼獲得、ひいては競争力強化に繋がります。
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長期的なコスト削減: 廃棄物処理費の削減はもちろん、資材のレンタルや再利用を促進することで、新規資材購入にかかる費用を抑えることが期待できます。初期の投資は必要かもしれませんが、中長期的な視点で見れば、外注費削減や生産性向上にも寄与するでしょう。
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新たなビジネスモデルの創出: 資源循環を前提とした設計は、資材のリユース・リサイクルを専門とする企業との連携や、新たなサプライチェーンの構築を促します。これは、業界全体のイノベーションを加速させる可能性を秘めています。
導入の課題
一方で、導入にはいくつかの課題も存在します。
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初期の作業工数増加: 従来の設計フローから循環型設計へと変更するため、企画・制作段階での検討事項が増え、作業工数が増加する可能性があります。特に、資材の選定やリサイクルルートの確保には、これまでの経験則とは異なる専門知識や調整が必要となるでしょう。
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サプライチェーンの再構築: リサイクルしやすい資材の調達や、使用済み資材の回収・再資源化を担うパートナーの選定など、既存のサプライチェーンを見直す必要があります。これは、新たな関係性の構築や契約の見直しを伴うため、時間と労力がかかるかもしれません。
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導入コスト: トレーサビリティシステムのようなデジタル管理ツールの導入や、リサイクル・リユースに適した資材への切り替えには、初期投資が必要です。これらのコストと、それによって得られる長期的なメリットを慎重に比較検討することが重要です。
スタートアップ企業がサーキュラーエコノミーから学ぶべきこと
今回の実証実験は、スタートアップ企業にとっても多くの学びを提供します。
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初期段階での設計思想の重要性: 事業の立ち上げ段階からサーキュラーエコノミーの考え方を取り入れることで、将来的な廃棄物問題や環境規制への対応を先行して織り込むことができます。これは、後からの大規模な変更よりもはるかに効率的です。
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廃棄物を出さないビジネスモデル構築のヒント: イベント資材のレンタル・再利用、リサイクルしやすい素材の選定といったアプローチは、製品開発やサービス設計においても応用可能です。廃棄物を「資源」と捉え、その循環を前提としたビジネスモデルは、新たな市場を切り拓く可能性を秘めています。
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デジタル技術を活用した効率化: QRコードを用いたトレーサビリティシステムのように、デジタル技術は資源の管理や循環プロセスを効率化する上で不可欠です。スタートアップは、こうした技術を積極的に導入し、データに基づいた持続可能な運営を目指すべきでしょう。
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協業によるサプライチェーン構築: 単独での取り組みには限界があります。異なる分野の企業や団体との協業を通じて、資材の調達から回収、再資源化までの一貫したサプライチェーンを構築することが、成功への鍵となります。
まとめ:持続可能なイベント運営への第一歩
大阪・関西万博「サーキュラーエコノミー研究所」の実証実験は、イベント業界における廃棄物ゼロの実現が夢物語ではないことを明確に示しました。たしかに、従来の運用からの変更には課題も伴いますが、今回の知見を活かし、サーキュラーな設計・制作手法の改善と推進を図ることで、そのハードルはきっと乗り越えられるでしょう。
環境への意識が高まる現代において、サーキュラーエコノミーは、単なるコスト削減や生産性向上に留まらず、企業の競争力強化、そして持続可能な社会への貢献という大きな価値を生み出します。今回の成功事例は、イベント業界だけでなく、あらゆる産業にとって、持続可能な未来への大きな一歩となるはずです。あなたのビジネスも、この波に乗ってみませんか?
関連情報
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経済産業省のサーキュラーエコノミー(循環経済)に関するWebサイト
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/shigenjunkan/circular_economy/action/index.html -
循環経済を楽しく学べる「サーキュラーエコノミーのがっこう」
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/shigenjunkan/circular_economy/action/school/
