エレベーターが“発電所”になる時代へ:APh ePowerがR&D 100賞を受賞
「エレベーターが発電所になる」──そんな未来が現実のものとなりつつあります。アルミニウム電池技術のパイオニアである台湾APh ePower社は、エレベーターの昇降時に発生する運動エネルギーを電力として回収する画期的なシステム「エレベーター回生電力システム(ERPS)」を開発し、権威ある2025年R&D 100賞を受賞しました。
この技術は、日常的に利用されるエレベーターを高性能な分散型エネルギー回収エンジンへと変革し、エネルギー効率と持続可能な資産管理の新たな可能性を切り開きます。

無駄なエネルギーを価値ある電力へ:ERPSが解決する課題
現代のビルにおいて、エレベーターは必要不可欠な設備ですが、その運用には多くの電力が消費されます。特に、軽負荷での上昇時や重負荷での下降時には、回収可能な運動エネルギーが無駄に捨てられていました。
APh ePowerのERPSは、この見過ごされてきたエネルギーに着目。高効率なDC-DCコンバーターを用いて、90%を超える変換効率で運動エネルギーを回収します。回収された電力は、急速充放電が可能な超高安全アルミニウム・バッテリに蓄積され、必要な時にエレベーターの運転に再利用されます。
これにより、電力消費量の削減だけでなく、停電時にもエレベーターの継続運転を可能にし、乗客の安全性を飛躍的に高めるなど、従来のシステムでは実現できなかったレジリエンス(回復力)を建物にもたらします。
カーボン・クレジット創出で新たな収益源を
ERPSの導入は、単なるエネルギー削減に留まりません。2025年4月には、世界的なカーボン・クレジット認証機関であるGold Standardが、エレベーター回生電力システムによるカーボン・クレジット創出を可能とする世界初の適用方法論を承認しました。これは、ERPSによって削減された二酸化炭素排出量を、取引可能なカーボン・クレジットとして換算できることを意味します。
企業やビルオーナーは、ERPSを導入することで、エネルギーコストの削減に加え、カーボン・クレジットを売却することで新たな収益源を得ることが可能になります。これは、脱炭素社会への貢献と経済的メリットを両立させる画期的な仕組みであり、自発的カーボン市場におけるエレベーター・プロジェクトに大きな影響を与えるでしょう。
導入がもたらすメリットとスタートアップが学ぶべきこと
ERPSの潜在的な影響は計り知れません。世界中で稼働する1,500万台以上のエレベーターにAPh ePowerのシステムが導入されれば、年間で40%以上のエネルギー使用量削減、合計164テラワット時の節約効果が期待されます。これは、多くのハイパースケールAIデータセンターの総電力消費量を上回る規模です。
導入後のメリット:
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コスト削減と生産性向上: エレベーターの電力消費を大幅に削減し、運用コストを抑制します。削減されたコストは他の投資に回すことができ、企業の生産性向上に貢献します。
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競争力強化とブランド価値向上: 環境負荷低減への取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たし、競争力の強化やブランドイメージの向上に繋がります。
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新たな収益源の確保: カーボン・クレジットの創出と売却により、持続可能性への投資が直接的な経済的リターンを生み出します。
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レジリエンスの強化: 停電時でもエレベーターが稼働し続けることで、災害時などの安全性と事業継続性を確保します。
スタートアップが学ぶべきこと:
APh ePowerの成功は、既存のインフラ設備に新たな価値を見出し、最先端技術(アルミニウム電池など)と組み合わせることで、大きな市場を創出できることを示しています。単なる技術開発に終わらず、カーボン・クレジットという形で経済的インセンティブを組み込んだ点も、導入を後押しする重要な要素です。課題解決だけでなく、その先の収益化モデルまで見据えることが、持続可能なビジネス成長には不可欠と言えるでしょう。
多角的な展開:エレベーターからAIデータセンターへ
APh ePowerにとって、エレベーターは始まりに過ぎません。同社は、アルミニウムベースの動的蓄電技術を、AIデータセンターのバックアップシステム、ハイブリッドモビリティプラットフォーム、無人搬送車(AGV)、ロボティクス、そして次世代スマートシティを形作るインフラへと拡大する計画を進めています。
急速な充放電性能と高い安全性が求められる用途において、アルミニウム電池は不可欠な選択肢として注目されています。APh ePowerは、日常的なデバイスがエネルギーを捕捉し、貯蔵し、さらには収益化する方法を再定義することで、日々の運用から測定可能で資金調達可能な利益を生み出すことを目指しています。
まとめ
APh ePowerのエレベーター回生電力システムは、ビルのエネルギー効率を劇的に改善し、カーボン・クレジット創出による新たな経済的価値を生み出す、まさに「未来の発電所」です。この革新的な技術は、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩であり、企業が環境負荷低減と経済的利益を両立させるための強力なソリューションとなるでしょう。
詳細については、APh ePowerのウェブサイトをご覧ください。
