上川町が示す新しい働き方へのヒント「感動人口」とは?

イベントの冒頭では、上川町東京事務所の三谷氏より、上川町のユニークな地域経営の考え方が紹介されました。人口約3,000人の小さな町でありながら、上川町が目指すのは、定住人口の増減だけに依存しない地域づくりです。彼らが重視するのは「感動人口」という概念。これは、地域に関わる人数の多さではなく、人の心が動いた“感動の総量”を地域の力として捉えるものです。
「上川町は完成された町ではなく、成長を続ける町。関わり方に正解はなく、働き方や暮らし方の延長線上で、誰もがバッターボックスに立てる余白がある」と三谷氏は語り、参加者に対し、多様な関わり方の可能性を提示しました。これは、地域課題の解決だけでなく、企業が多様な人材を巻き込み、新しい価値を創造していく上での重要な視点となるでしょう。
「個が輝く働き方」を深掘り!未来のキャリアをデザインする鍵
まちの再定義から読み解く、未来の働き方

キーノートセッションでは、上川町地域魅力創造課の小知井氏より、上川町が実践してきた具体的な取り組みが紹介されました。副業や短期参画、プロジェクト単位での関与など、キャリアを一本の線ではなく「点」として地域に接続する「サードキャリア」の考え方は、誰もが当事者として関われる町づくりを推進しています。これは、個人が複数の役割を持つ「複業」や「パラレルキャリア」を志向する現代において、非常に示唆に富むアプローチです。
また、セッション後半では、テクノロジーが進化する中で人が人であることに集中するための補助線としてAIをどう活用するか、そして町内会のような「おせっかいなコミュニティ」が人の孤立を防ぐ重要な装置であるという視点が提示されました。効率性だけではない、感情や偶発的な出会いの価値を再認識することは、企業組織においても人間らしいつながりを育む上で不可欠と言えるでしょう。
枠を超えた新しい働き方の実践者たち

トークセッション1では、「枠を超える働き方」について議論が交わされました。登壇者たちは、所属先や行動にとらわれず、「どんなテーマに向き合うか」を起点に働き方を組み立てていく重要性を強調。肩書きや雇用形態に自分を当てはめるのではなく、解きたい問いや関心を軸に行動することで、結果として複数の役割や仕事が立ち上がってくるというプロセスが語られました。
この議論は、「会社員」「副業人材」「フリーランス」といった既存の枠を設定するからこそ、人はその内側に自分を閉じ込めてしまうのではないか、という問題提起へと発展しました。そもそも枠をなくせば「超える」という発想自体が不要になるという考え方は、個人のキャリアだけでなく、企業が多様な人材を迎え入れる際の組織設計にも大きなヒントを与えるでしょう。
いま注目されるゼブラな働き方から未来を描く

トークセッション2では、「ゼブラな働き方」を切り口に、地域と関わることの本質や仕事観そのものについて議論が深められました。北海道テレビ放送の藤村忠寿氏からは、「組織人であること」「常識を守るだけでは100点には届かない」といった仕事観が紹介され、結果がどうなるか分からないことにもあえて挑戦する姿勢が、人との関係性や仕事の面白さを生むという考えが共有されました。
藤村氏はまた、「何千人、何万人を受け入れるよりも、意味のある5〜6人との関係性を大切にしたい」と語り、数ではなく質を重視した関わり方が示唆されました。急成長や規模拡大だけを目的とせず、関係性を育て、持続的に価値を生み出していく「ゼブラ」のような存在こそが、個人と地域双方の未来を変えていくというメッセージは、参加者に強く響いたことでしょう。

スタートアップ・企業が学ぶべき「共創」と「持続可能性」
このイベントから、スタートアップや既存企業が学び、自社の成長戦略に活かせるポイントは多岐にわたります。
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多様な人材確保とコスト削減: 「感動人口」や「サードキャリア」の概念は、フルタイム雇用に頼らず、副業やプロジェクト単位で外部の専門人材(関係人口)を活用するヒントを与えます。これにより、固定費である人件費を最適化し、必要な時に必要なスキルを導入することで、生産性向上や外注費削減に繋がる可能性があります。
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競争力強化とイノベーション促進: 従来の枠にとらわれない多様な働き方を受け入れることで、外部からの新しい視点やアイデアが組織に流入し、イノベーションを促進します。異なる背景を持つ人々との共創は、自社の競争力を高める上で不可欠です。
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持続可能な事業モデルの構築: 「ゼブラな働き方」が示すように、短期的な利益追求だけでなく、社会課題解決や地域との共存を目指すビジネスモデルは、長期的な企業価値向上に繋がります。これは、ESG投資が注目される現代において、企業の持続可能性を高める重要な戦略となります。
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新しい顧客エンゲージメントの創出: 「感動人口」の考え方は、顧客を単なる消費者としてではなく、ブランドやコミュニティの「共創者」として巻き込むヒントになります。これにより、顧客ロイヤルティを高め、ファンコミュニティを形成し、マーケティングコストの削減にも貢献するでしょう。
導入後のメリット・デメリット、そして成功への道
多様な働き方や地域との共創を企業活動に取り入れることは、大きなメリットをもたらす一方で、いくつかの課題も伴います。
メリット
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生産性向上: 外部の専門知識やスキルを柔軟に活用し、プロジェクトの質とスピードを高めることができます。
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コスト削減: 固定的な人件費の抑制、必要なスキルを必要な期間だけ導入することで、効率的な人材投資が可能になります。
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競争力強化: 多様な人材から生まれる新しい視点やアイデアが、市場での優位性を築きます。
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組織文化の活性化: 外部からの刺激が既存メンバーに良い影響を与え、組織全体の学習能力と適応力を高めます。
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地域との連携強化: 企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、新たな事業機会やブランド価値の向上に繋がります。
デメリット・課題
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マネジメントの複雑化: 多様な働き方を受け入れるための管理体制や評価制度の構築が必要となり、従来の画一的なマネジメントでは対応が難しい場合があります。
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コミュニケーションの壁: 物理的な距離や関わる頻度の違いから、情報共有や意思疎通に工夫が必要となります。
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企業文化との融合: 新しい価値観が流入する中で、既存の企業文化との摩擦が生じる可能性もあります。柔軟な組織変革への意識が不可欠です。
成功への道
これらの課題を乗り越え、成功に導くためには、以下の点が重要になるでしょう。
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明確なビジョンと目的設定: なぜ多様な働き方や地域との共創を取り入れるのか、その目的を明確にし、社内外に共有することが重要です。
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柔軟な制度設計と受け入れ体制: 従来の雇用形態にとらわれず、副業や兼業、プロジェクト型契約など、多様な関わり方を許容する制度を整えることが求められます。
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信頼関係の構築: 短期的な成果だけでなく、長期的な視点に立ち、関わる人々との信頼関係を丁寧に育むことが、持続可能な共創の基盤となります。
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積極的な情報共有とコミュニケーション: オンラインツールや定期的なミーティングなどを活用し、物理的な距離を超えた密なコミュニケーションを意識することが不可欠です。
まとめ
「WORK SHIFT LOCAL 2050@札幌」イベントは、働く場所や肩書きに縛られず、「誰と、何に向き合うか」を自ら選び続けることの重要性を浮き彫りにしました。北海道上川町が示す「感動人口」や「ゼブラな働き方」といった概念は、個人が自分らしいキャリアを築く上で、そして企業が持続的に成長し、社会に貢献していく上で、非常に価値あるヒントを与えてくれます。
これからの時代、企業は「関わる人」を増やし、多様な知見とスキルを取り入れることで、生産性を向上させ、コストを最適化し、競争力を強化できるはずです。上川町のように、越境的な人の関わりを通じて、個と地域がともに成長する新しい働き方を、あなたの組織でもぜひ探求してみてはいかがでしょうか。
関連リンク
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カミカワークプロジェクト: https://www.kamikawork.jp/
