治験文書管理のDXを加速!DNPとシミックヘルスケアが共同開発したクラウドサービス『Clinical Trial Sync』が拓く未来
新薬開発は、私たちの健康を守る上で欠かせない大切なプロセスです。その中でも、臨床試験(治験)は厳格なルールと膨大な文書管理が伴い、多くの医療機関や製薬企業にとって大きな負担となっていました。そんな課題を解決すべく、大日本印刷株式会社(DNP)とシミックヘルスケア・インスティテュート株式会社がタッグを組み、治験文書を統合的にデジタル管理するクラウドサービス「治験文書クラウドサービス『Clinical Trial Sync』(クリニカルトライアルシンク)」を共同開発しました。2026年7月のサービス開始が予定されており、治験の現場に大きな変革をもたらすことが期待されています。
治験文書管理の現状と課題:なぜ今、DXが必要なのか?
治験関連文書は、その性質上、非常に多くの種類が存在し、作成、授受、保管、管理といった一連の作業に多大な時間と労力がかかります。特に、近年ではペーパーレス化による作業効率の向上や資料紛失リスクの低減といった観点から、電子化・電磁化の重要性が高まっています。しかし、それでもなお多くの医療機関では、紙ベースの管理や非効率なデジタル管理が混在しているのが実情でした。
さらに、国際競争力強化のために、複数の医療機関で実施する臨床試験を一つの治験審査委員会(IRB:Institutional Review Board)で審査する「シングルIRB」の導入に向けた動きが活発化しています。シングルIRBが原則化されると、取り扱う審議資料の数が格段に増え、より効率的かつ円滑な文書管理システムの整備・運用体制が不可欠となります。この複雑さを乗り越え、治験のスピードと品質を両立させることが、業界全体の喫緊の課題となっているのです。
『Clinical Trial Sync』が解決する悩み:非効率な治験文書管理からの解放
『Clinical Trial Sync』は、治験実施医療機関、治験依頼者(製薬企業やCROなど)、そしてIRBの間で行われる治験関連文書の作成、授受、保管、管理業務を統合的にデジタル化することで、これらの悩みを根本から解決します。

具体的に解決できること
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煩雑な文書配布・確認作業の効率化: 依頼者(製薬会社など)は文書配布を一括で効率化でき、審査委員会はブラウザ上でファイルを簡単につなげて閲覧できるようになります。これにより、個別の対応や1ファイルずつの確認といった大きな負担が軽減されます。
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シングルIRBへの円滑な対応: 今後原則化が見込まれるシングルIRBにおいて、多数の審議資料の集約・閲覧が円滑に行えるようになり、審査業務の効率化を実現します。
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治験現場起点のワークフロー: 製薬会社、医療機関、治験審査委員会といった関係者ごとに権限やフローを設定し、申請から承認、保管までをテンプレート化。これにより、関係者間のスムーズな連携が実現し、治験業務全体のスピードアップにつながります。
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トレーニング記録の一元管理: 治験実施者に求められる事前トレーニングの実施記録を試験単位・組織単位で一元管理。監査時の確認作業負荷を大幅に低減し、コンプライアンス強化にも貢献します。
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高いセキュリティ基準: 厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」に準拠した多要素認証に対応し、セキュアな環境で安心して文書を管理できます。
『Clinical Trial Sync』の導入メリット:生産性向上、コスト削減、競争力強化
このサービスを導入することで、治験に関わる全てのステークホルダーが様々なメリットを享受できます。
生産性向上と外注費削減
紙媒体での文書管理や手作業によるプロセスは、時間と人的リソースを大量に消費します。『Clinical Trial Sync』により、これらの作業がデジタル化・自動化されることで、治験業務のリードタイムが短縮され、全体の生産性が劇的に向上します。また、文書の印刷、郵送、保管にかかる物理的なコストや、非効率な作業のために発生していた外注費などの間接的なコストも削減できるでしょう。
コスト削減と効率的なリソース配分
電子化された文書管理は、紙の購入費、印刷費、保管スペース費用を削減します。さらに、トレーニング記録の一元管理やワークフローの最適化により、これまで文書管理に割かれていた人的リソースを、より本質的な治験業務や研究開発に集中させることが可能になります。これにより、組織全体のコスト構造が改善され、リソースの効率的な配分が実現します。
競争力強化と新薬開発の加速
治験プロセスのDXは、新薬開発のスピードを加速させる上で不可欠です。効率的な文書管理は、治験期間の短縮に直結し、結果として新薬がより早く患者さんのもとに届くことにつながります。これは製薬企業にとって、国際的な競争力を高める上で非常に大きなアドバンテージとなります。
信頼性と安全性
医療情報システムのガイドラインに準拠したセキュリティは、機密性の高い治験文書を安全に管理するための基盤となります。多要素認証やセキュアなデータ管理は、情報漏洩のリスクを低減し、治験の信頼性を高めます。
スタートアップが学ぶべきこと:DX推進とパートナーシップの重要性
スタートアップ企業にとって、『Clinical Trial Sync』の共同開発事例は多くの示唆を与えてくれます。
- 業界特有の課題解決に注力する: 治験文書管理というニッチながらも深い課題に対し、明確な解決策を提示しています。自社の専門分野で、まだデジタル化が進んでいない、あるいは既存のソリューションでは不十分な領域を見つけることが重要です。
- 強みを活かしたパートナーシップ: DNPのセキュアなデータ管理・システム構築の強みと、シミックヘルスケアの治験現場での豊富な経験とノウハウが組み合わさることで、単独では実現し得なかった高品質なサービスが誕生しました。自社の弱みを補完し、強みを最大化できるパートナーを見つけることは、スタートアップの成長に不可欠です。
- 規制変化への適応力: シングルIRBという将来的な規制変化を見据え、それに柔軟に対応できるシステムを開発している点は、アジャイルな開発と市場の変化への迅速な対応の重要性を示しています。
- ユーザビリティの追求: 「利用者の使いやすさ」を追求し、関係者間のスムーズな連携を図ることで、現場の要望に即したDXを実現しています。どんなに優れた技術も、使われなければ意味がありません。エンドユーザーの視点に立った製品開発が成功の鍵となります。
導入後のメリット・デメリット(導入検討時の留意点)
どんなに優れたサービスでも、導入には検討すべき点があります。
メリット
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業務効率の大幅な向上: 手作業や紙ベースの作業が減り、治験の各プロセスがスムーズになります。
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情報管理の精度とセキュリティ強化: ヒューマンエラーによる紛失や情報漏洩のリスクが低減し、監査対応も容易になります。
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迅速な治験進行: 文書授受や審査の遅延が解消され、新薬開発期間の短縮に貢献します。
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リモートワーク対応: クラウドサービスのため、場所を選ばずに業務を行えるようになり、柔軟な働き方を実現します。
デメリット(導入検討時の留意点)
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初期導入コスト: 新しいシステムを導入するため、初期費用が発生します。費用対効果を慎重に検討する必要があります。
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既存システムからの移行: 現在運用している文書管理システムからのデータ移行や、新しいシステムへの慣れが必要です。移行期間中の業務への影響を最小限に抑える計画が重要です。
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関係者へのトレーニング: 医療機関、製薬企業、IRBの各関係者がシステムを使いこなせるよう、適切なトレーニングとサポートが求められます。
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運用体制の構築: システム導入後も、問い合わせ対応やトラブルシューティングなど、安定的な運用を支える体制が必要です。
多角的分析:治験エコシステム全体への影響
『Clinical Trial Sync』は、単なる文書管理システムの域を超え、治験エコシステム全体にポジティブな影響を与える可能性を秘めています。DNPのセキュアなシステム構築・運用ノウハウと、シミックヘルスケアが長年培ってきたSMO(治験施設支援機関)としての医療機関での臨床試験支援経験、治験事務局支援の強みが融合することで、治験依頼者から医療機関、そしてIRBまで、全ての関係者がスムーズに連携できるプラットフォームが生まれます。
これにより、治験プロセス全体の透明性が向上し、情報共有が円滑になることで、より高品質な治験実施が可能となるでしょう。DNPとシミックヘルスケアは、今後も他システムとの連動を強化し、治験のスピードと品質を両立するプラットフォームの構築を視野に入れているとのこと。これは、日本の治験が国際競争力を高め、世界の医療に貢献するための大きな一歩となるはずです。
まとめ:治験DXの未来を拓く『Clinical Trial Sync』
治験文書管理のDXは、新薬開発のスピードアップ、医療機関の負担軽減、そして患者さんへのより良い医療提供に直結する重要な取り組みです。『Clinical Trial Sync』は、DNPとシミックヘルスケアという異なる強みを持つ企業が手を組むことで生まれた、まさに治験現場のニーズに応える画期的なサービスと言えるでしょう。
もし、貴社が治験文書管理の非効率性に悩んでいたり、シングルIRBへの対応に不安を感じていたりするなら、ぜひ『Clinical Trial Sync』の導入を検討してみてはいかがでしょうか。このサービスが、治験業務の新たなスタンダードとなり、日本の医療の未来を明るく照らすことを期待しています。
関連情報
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大日本印刷株式会社: https://www.dnp.co.jp/
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シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社: https://www.cmic-hci.com/
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DNPニュースリリース詳細: https://www.dnp.co.jp/news/detail/20177792_1587.html
