海洋ごみ問題の現状と河川回収の重要性
海洋ごみの国内流出量は年間2〜6万トンと推定されており、その約80%が都市部の街ごみに由来すると言われています。この事実から、海洋に到達する前の河川段階で効率的にごみを回収することが、問題解決の鍵を握ることがわかります。
しかし、これまでの河川ごみ回収は、大規模な設備や多くの人手を要するものが多く、導入や運用に課題がありました。こうした背景の中で、クリーンオーシャンアンサンブルが開発した河川ごみ回収装置「kawasemi」は、まさに導入を検討している人々にとって希望の光となるでしょう。
画期的な河川ごみ回収装置「kawasemi」の誕生
クリーンオーシャンアンサンブルが開発した「kawasemi」は、河川の流れを活かしてごみをせき止めるウイングと回収ポケットを備えたパッシブ型回収装置です。この装置の最大の特長は、そのシンプルさと効率性にあります。

導入の成功事例:都市河川での実証が示す驚異的な回収効率
香川県高松市の詰田川で行われた実証実験では、1日あたりの平均回収量が4.70 kg-wet(湿重量)に達しました。これは、過去の海洋における回収量(0.045 kg-wet/日)と比較して、約100倍もの高い回収効率を示唆しています。このデータは、河川段階での回収がいかに有効であるかを明確に示しています。

「kawasemi」がもたらす多角的なメリット
「kawasemi」の導入は、多くのメリットをもたらします。
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生産性向上とコスト削減:小型で可搬性が高く、最低2名で設置・運用が可能です。これにより、大規模な設備投資や多くの人件費をかけずに、ごみ回収活動を効率的に行えます。外注費の削減にも繋がり、持続可能な運用が期待されます。
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競争力強化:高効率なごみ回収は、地域の環境保全活動を加速させ、クリーンな河川・海洋環境を創出します。これは、地域社会のイメージ向上にも繋がり、環境問題に取り組む組織としての競争力を高めるでしょう。
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全国展開への大きな可能性:全国の二級河川7,086本に展開した場合、年間1.22万トン(国内排出量の約3割)のごみ回収ポテンシャルがあり、一級+二級河川合計21,169本では年間3.63万トン(約9割)もの回収が見込まれます。これは、日本の海洋ごみ問題の大部分を解決しうる、非常に大きなインパクトを持つ試算です。

スタートアップが学べること:社会課題解決へのアプローチ
クリーンオーシャンアンサンブルの取り組みは、社会課題解決を目指すスタートアップにとって多くの示唆を与えます。
- 具体的な課題への集中:海洋ごみ問題の中でも「河川段階での回収」という具体的な課題に焦点を当て、高効率な解決策を追求しています。
- 実証とデータに基づいたアプローチ:実際の都市河川での実証実験を通じてデータを収集し、その有効性を客観的に示しています。これにより、技術の信頼性が高まり、社会実装への道が開かれます。
- 分野横断の連携と評価:「超異分野学会」のような場で発表し、外部からの評価を得ることで、技術の認知度を高め、新たな連携の機会を創出しています。
- 社会貢献とビジネスの両立:環境問題解決という社会貢献をしながらも、効率的な装置開発と全国展開のポテンシャルを示すことで、持続可能な活動モデルを構築しようとしています。
まとめ:未来への貢献と支援の呼びかけ
NPO法人クリーンオーシャンアンサンブルの河川ごみ回収技術は、海洋ごみ問題に対する効果的な解決策として、大きな期待が寄せられています。この活動は、清らかな河川と海洋を取り戻し、持続可能な社会を実現するために不可欠な一歩です。
彼らは、ごみ回収量の相関因子の明確化、他河川での展開、回収ごみの処理・再資源化ルートの拡充など、今後の展望も明確に描いています。この重要な取り組みをさらに前進させるためには、皆さまの力が必要です。

支援・参加の方法
クリーンオーシャンアンサンブルの活動を応援したい方は、以下の方法で支援・参加が可能です。
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寄付・協賛で支援する:
https://donation.cleanoceanensemble.com/ -
ボランティア・プロボノとして参加する:ITエンジニア、マーケティング、営業・協賛パートナー支援、人事、現場エンジニア(小豆島)などのスキルを持つ仲間を募集しています。月1回の説明会も開催されています。
https://peatix.com/group/12922636
団体概要
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名称:NPO法人クリーンオーシャンアンサンブル(NGO Clean Ocean Ensemble)
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住所:香川県小豆郡小豆島町坂手甲986番地
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設立:2020年12月
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代表理事:江川 裕基、田中秀典
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主な活動国:日本、モザンビーク、ベトナム
参考文献
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超異分野学会 豊橋フォーラム2025 | 超異分野学会,https://hic.lne.st/archive/toyohashi2025/
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【実施報告】2025年11月29日(土)超異分野学会 豊橋フォーラム2025を開催しました | リバネス,https://lne.st/2025/12/11/hic-toyohashi-2025-report/
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Jambeck, J. R.; Geyer, R.; Wilcox, C.; Siegler, T. R.; Perryman, M.; Andrady, A.; Narayan, R.; Law, K. L. Plastic Waste Inputs from Land into the Ocean. Science 2015, 347 (6223), 768–771. https://doi.org/10.1126/science.1260352
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European Environment Agency. From Source to Sea—The Untold Story of Marine Litter; European Environment Agency: Copenhagen, 2023.
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国土交通省 水管理・国土保全局『河川データブック2024』, 2024.
