ブッキング・ドットコム、JTB、楽天トラベルが共催「Sustainable Together」が示す持続可能な観光の未来

旅行業界の未来を考える上で、サステナビリティは避けて通れないテーマです。2025年10月30日、世界最大級のデジタルトラベルプラットフォーマーであるBooking.comは、株式会社JTB、楽天トラベルと共に、日本の観光における持続可能性を業界横断で考える会「Sustainable Together」を共催しました。
このイベントは、一企業だけでは解決が難しいサステナビリティという社会課題に対し、業界の垣根を越えて連携し、新たな行動の一歩を踏み出すことを目的としています。本記事では、この画期的な取り組みから見えてくる日本のサステナブルツーリズムの現状と未来、そして業界全体が学ぶべきポイントについて深掘りしていきます。
旅行業界が抱える「意識と行動のギャップ」という課題
世界的にサステナビリティが旅行先選定の重要な要素となる一方、日本の旅行者はまだ関心が薄い状況が続いています。さらに、「サステナビリティに関する選択肢が少ない(見つけられない)」という声も多く聞かれ、旅行者の「意識」と「行動」の間には大きなギャップが存在しています。このギャップこそが、日本のサステナブルツーリズム推進における喫緊の課題と言えるでしょう。
この問題は、旅行者にとって「サステナブルな旅をしたいけれど、どうすればいいか分からない」という悩みを生み、事業者にとっては「環境に配慮した取り組みをしているが、旅行者に伝わらない」という課題に直結します。
課題解決への一歩:業界横断の連携と「12のヒント」

Booking.com、JTB、楽天トラベルの3社は、サステナブルツーリズムにおける国際団体「GSTC(Global Sustainable Tourism Council)」に初期から参加していたことを背景に、「日本市場においても連携して貢献できることがあるのではないか」という共通認識から今回の連携を実現しました。
2024年には、旅行者がサステナブルな旅に取り組みやすくなるよう、12個の「サステナブルな旅行のヒント」を作成。これらは「ツーリズムEXPOジャパン2024」や「宿フェス」といった観光業のイベントで積極的に啓発活動に活用されました。

「12のヒント」から生まれるメリット
この「12のヒント」は、旅行者にとって具体的な行動指針となり、サステナブルな選択を促します。事業者にとっては、これらのヒントを参考にすることで、自社のサービスをサステナブルな視点から見直し、新たな価値創造や競争力強化に繋げることが期待できます。例えば、節水やフードロス削減は直接的なコスト削減に繋がり、地域のお土産や食材の活用は地域経済への貢献と同時に、旅行体験の付加価値を高めます。
今後、3社はこれらのヒントを軸に、以下の2点に注力します。
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認知・理解の拡大:旅行者やステークホルダーへの露出を最大化し、継続的な認知拡大を目指します。
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影響・効果の可視化:各ヒント(例:節水、フードロス削減など)がもたらす影響を定量化・測定し、行動変容を促すための「深掘り」を行います。
先進事例に学ぶサステナビリティ認証の力
「Sustainable Together」では、メズム東京 オートグラフ コレクション 総支配人の生沼 久 氏と、オークラニッコーホテルマネジメントの香田 幸治 氏がゲストとして登壇し、先進的な取り組み事例を共有しました。特に注目されたのは、第三者機関が認定するサステナビリティの国際ラベルや認証取得の重要性です。

現在、日本国内で取得が進められている国際ラベルや認証として、サクラクオリティグリーン、グリーンキー・エコラベル、GSTC認証の3つが紹介されました。これらの認証は、宿泊施設がサステナブルな取り組みを行っていることを客観的に証明し、旅行者にとって信頼できる選択肢となります。
認証取得は、初期投資や手間がかかる側面もありますが、取得による社内外への効果は大きく、企業のブランドイメージ向上、従業員の意識統一、そしてサステナブル志向の旅行者の獲得に繋がる成功事例となっています。これは、競争力強化に直結する重要な要素と言えるでしょう。
「サステナブル・トラベルレポート 2025」が示す旅行者の本音
Booking.comが発表した「サステナブル・トラベルレポート 2025」の最新調査結果からは、旅行者の意識の変化が明確になりました。

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意識の高まり:全世界の旅行者の84%が「よりサステナブルに旅することが重要」と回答。また、旅行者の53%が「観光が地域社会や環境に与える影響を意識するようになった」と回答し、この数値は調査開始以来初めて半数を超えました。
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旅行者の希望と行動:世界の旅行者の73%(日本の旅行者:63%)が「自分の消費が地域社会に還元されることを望んでいる」と回答。69%(日本の旅行者:59%)が「訪れた場所を、訪問時よりも良い状態にして去りたい」と回答しています。
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オーバーツーリズムへの対応:旅行者自身も混雑を避けるため、39%が「混雑を避けた旅行時期についてアドバイスを求めている」、36%が「代替の目的地を訪れている」と回答し、行動変容が見られます。
このように、サステナブルな旅の重要性を認識する旅行者は増えているものの、「サステナブルな選択肢を見つけるのが難しい」と感じる旅行者が依然として多いことが浮き彫りになりました。このギャップを埋めることが、旅行業界にとって最も重要な課題の一つです。
スタートアップが今すぐ取り組むべきこと:競争力強化への道
このイベントは、スタートアップ企業にとっても多くの示唆を与えます。大手3社の連携とデータ活用、そして認証の重要性は、新たな市場で競争力を築くためのヒントに満ちています。
1. 「ギャップ」にビジネスチャンスを見出す
旅行者がサステナブルな選択肢を見つけにくいという「ギャップ」は、新しいサービスやプラットフォームを開発する大きなチャンスです。例えば、特定の地域に特化したサステナブルな宿泊施設や体験をキュレーションするサービス、環境負荷を可視化するアプリ、地域貢献に特化した旅行プランの提供などが考えられます。これは、外注費削減や生産性向上に繋がる自社開発の可能性も秘めています。
2. データに基づいた価値提供
3社が影響・効果の可視化に取り組むように、スタートアップも自社のサステナブルな取り組みがどのようなポジティブな影響をもたらしているかを定量的に示すことが重要です。これにより、旅行者への説得力が増し、ブランド価値を高めることができます。
3. 認証による信頼の獲得
大手企業が認証の重要性を強調しているように、サステナビリティ認証の取得は、スタートアップが市場で信頼を獲得し、差別化を図る上で非常に有効です。初期段階から認証取得を視野に入れることで、将来的な競争力強化に繋がります。
サステナブルツーリズム導入のメリット・デメリット
メリット
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ブランドイメージの向上:環境意識の高い旅行者からの支持を得られ、企業の社会的責任(CSR)を果たすことでブランド価値が高まります。
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新たな顧客層の獲得:サステナブル志向の旅行者は増加傾向にあり、この層を取り込むことで市場シェアを拡大できます。
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コスト削減と生産性向上:節水、省エネルギー、フードロス削減などの取り組みは、長期的に運営コストの削減に繋がり、効率的な経営体制を構築できます。
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従業員のエンゲージメント向上:企業のサステナブルな取り組みは、従業員のモチベーションや誇りを高め、生産性向上に寄与します。
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地域社会との良好な関係構築:地域資源の保護や地域経済への貢献を通じて、地域社会からの信頼と協力を得やすくなります。
デメリット
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初期投資:サステナビリティ認証の取得や環境配慮型設備への切り替えには、初期費用が発生する場合があります。
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情報発信の難しさ:サステナブルな取り組みを旅行者に効果的に伝え、行動変容を促すためのマーケティング戦略や情報発信の工夫が必要です。
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継続的な努力とコミットメント:サステナビリティは一度取り組んで終わりではなく、常に改善と進化を続ける必要があります。
まとめ:持続可能な観光の未来へ向けて
Booking.com、JTB、楽天トラベルの3社が共催した「Sustainable Together」は、日本のサステナブルツーリズム推進における重要な一歩となりました。旅行者の意識と行動のギャップを埋め、持続可能な選択肢を容易に見つけられる環境を整えるためには、業界全体の協力が不可欠です。
Booking.com 日本代表のルイス・ロドリゲス氏は、「旅行業界のリーダーとして、私たちは旅行者とパートナーの双方が、自分たちの選択が訪問先の地域にポジティブな影響をもたらしていると自信を持てるよう支援したいと考えています。信頼できる第三者機関によるサステナビリティ認証を取得している宿泊施設をわかりやすく紹介するなど、旅行者が持続可能な選択肢を容易に見つけられるよう、引き続き取り組んでまいります。」と述べています。
このイベントで示された方向性は、単に環境に優しいだけでなく、地域社会に貢献し、経済的な持続可能性も追求する「真のサステナブルツーリズム」の実現に向けたロードマップと言えるでしょう。各企業が連携し、データに基づいた取り組みを進めることで、日本の観光はきっと、より豊かで持続可能な未来へと進化していくことでしょう。
関連情報
- Booking.comの公式ニュースサイト: https://news.booking.com/ja
