アフラック、日立、GlobalLogicが示す新たな健康経営の形
日本において、生涯のうちにがんと診断される確率は約2人に1人と言われています。特に、働き盛りの就労世代(20歳~64歳)で新たにがんと診断される人が約30%にものぼる現状は、企業にとって無視できない大きな課題です。従業員が安心して働き続けられる環境をどう築くか、これは単なる福利厚生ではなく、企業の持続的な成長を左右する「健康経営」の重要な柱となっています。
このような背景の中、アフラック生命保険株式会社、株式会社日立製作所、GlobalLogic Japan株式会社の3社が、日立の従業員約3,000人を対象とした「職域版キャンサーエコシステム」の効果検証を完了しました。この画期的な取り組みは、がんに関する従業員の意識向上を実現し、企業が抱える多くの課題解決への道筋を示しています。
現代社会におけるがんの課題と企業の役割
がんが身近な病気となる中で、就労世代のがん患者数は増加の一途をたどっています。企業はこれまでも健康管理の観点から様々な制度を整備してきましたが、従業員への認知不足や活用が進まないといった課題がありました。がんというデリケートな問題に対し、どのように従業員をサポートし、安心して治療と仕事を両立できる環境を整えるかは、人的資本経営において極めて重要なテーマです。
「職域版キャンサーエコシステム」とは?
「職域版キャンサーエコシステム」とは、がんを取り巻く社会的課題を包括的に解決するために、様々なステークホルダー(企業、病院、保険会社、行政など)が連携・協業する仕組みを、職域の従業員を当事者として構築するものです。

このエコシステムは、がんの罹患前から罹患後まで、従業員とその家族を継続的にサポートすることを目指しています。
協創の軌跡:3社の強みが融合
アフラック、日立、GlobalLogicの3社は、2022年12月からこの「職域版キャンサーエコシステム」の構築に向けた先行検討を開始しました。それぞれの専門性を持ち寄り、従業員視点での「ありたい姿」と、それを実現するための施策アイデアを具体化してきました。
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アフラック: がん保険のパイオニアとして、長年がんと向き合ってきた豊富な知見を提供。
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GlobalLogic: デザイン思考のアプローチに基づく課題抽出と施策アイデア創出力、デジタルエンジニアリング力で行動変容を促す仕組みを設計。
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日立: 社会イノベーション事業で培った価値協創のノウハウと、実証の場を提供。
これまでの取り組みを通じて、日立社内でもヘルスケア施策の認知率が低いことや、若年層のがん検診への意識が低いこと、保険相談の機会が限定的であるといった課題が明らかになっていました。これらの課題に対し、3社は連携し、従業員の目線に立った実効性のある施策を策定しました。
「がんを知り・がんに備える」プログラムの効果検証と驚きの成果
本検証は、2025年4月から11月にかけて、日立の従業員約3,000人を対象に実施されました。「がんを意識する機会の拡大」「がん検診の受診機会の拡大」「がん保険の検討機会の拡大」という3つのKPIを設定し、その有効性を確認しました。
具体的な施策としては、GlobalLogicの「行動のデザイン」の手法を取り入れ、個人の選択の自由を尊重しつつ、望ましい行動を自然に促す工夫が凝らされました。がんセミナーの周知方法の改善やアーカイブ配信の実施などがその一例です。
その結果、驚くべき成果が確認されました。
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がんセミナーの認知率が約20%向上。
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セミナー参加者の約70%が「がん検診を受けようと思った」と回答。
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保険相談の増加。
これらの結果は、単に情報を提供するだけでなく、従業員の行動変容を促す仕組みがいかに重要であるかを示しています。3つのKPIすべてにおいて一定の効果が得られ、従業員のがんに対する意識向上に大きく貢献したことが証明されました。

導入のメリット:企業と従業員に訪れる変化
このような「職域版キャンサーエコシステム」の導入は、企業と従業員双方に多大なメリットをもたらします。
従業員にとってのメリット
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安心感の向上: がんに対する正しい知識と備えの機会が増え、いざという時の不安が軽減されます。
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ウェルビーイングの実現: 健康への意識が高まり、早期発見・早期治療に繋がることで、より長く健康的に働き続けられる可能性が高まります。
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仕事と治療の両立支援: 企業からのサポート体制が明確になることで、治療が必要になった場合でも離職を考えずに済み、精神的な負担が軽減されます。
企業にとってのメリット
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健康経営の推進と競争力強化: 従業員の健康を重視する姿勢は、企業のブランドイメージ向上に繋がり、優秀な人材の確保・定着に貢献します。これは現代の競争社会において、企業の競争力を高める重要な要素です。
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生産性向上とコスト削減: 従業員が健康で安心して働ける環境は、エンゲージメントとモチベーションを高め、生産性向上に直結します。また、がんの早期発見・治療は、長期的な医療費負担の軽減や休職期間の短縮に繋がり、企業が負担する医療関連コストの削減にも寄与するでしょう。外注費削減効果のような直接的なものではありませんが、長期的な視点で見れば、人材に関するコスト効率の改善が見込めます。
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人的資本価値の向上: 従業員一人ひとりの健康とキャリアを大切にする文化は、人的資本としての企業価値を高めます。
多角的分析とスタートアップが学ぶべきこと
今回の取り組みは、単にがん対策に留まらず、多くの企業、特にスタートアップ企業が学ぶべき示唆に富んでいます。
- 異業種連携の力: 保険、IT、デジタルエンジニアリングという異なる強みを持つ企業が連携することで、単独では解決困難な社会課題に包括的にアプローチできることを示しました。スタートアップは、自社の技術やサービスが、大企業の持つ既存の課題解決にどのように貢献できるかを深く掘り下げることが重要です。
- 「行動のデザイン」の重要性: GlobalLogicが採用した「行動のデザイン」は、強制ではなく、自然な形で人々の行動変容を促す手法です。これは、健康管理だけでなく、従業員の学習、キャリア開発、サステナビリティ活動など、様々な社内施策に応用できるでしょう。デジタル技術を活用して、いかにユーザー(従業員)の行動を促すかは、あらゆるサービス開発において不可欠な視点です。
- 健康経営は投資である: 従業員の健康への投資は、短期的なコストではなく、長期的な視点で見れば企業の生産性向上、離職率低下、優秀な人材の確保、ひいては競争力強化に繋がる「未来への投資」です。スタートアップも、創業期から従業員のウェルビーイングを重視する文化を築くことで、強固な組織基盤を構築できます。
- データに基づいた効果検証: 3つのKPIを設定し、具体的な数値で効果を検証したことは、施策の有効性を客観的に示す上で不可欠です。どんなに良いアイデアでも、その効果を測定し、改善していくPDCAサイクルを回すことが成功の鍵となります。
今後の展望
今回の検証結果を受け、アフラックは「職域版キャンサーエコシステム」のプログラムをさらに充実させ、GlobalLogicのデジタルエンジニアリング力を活用してプラットフォームの設計・実装を進めていく予定です。日立も、この実績をもとに日立グループ全体での健康経営推進を目指し、取り組みの展開を検討していくとしています。
このエコシステムは、将来的には様々な企業へと展開され、より多くの就労世代ががんと向き合い、自分らしく働き続けられる社会の実現に貢献していくことでしょう。
まとめ
アフラック、日立、GlobalLogicの協創は、がんという社会課題に対し、企業がどのように従業員をサポートし、同時に企業価値を高めていくかの模範を示しました。従業員のウェルビーイング向上は、もはや福利厚生の枠を超え、企業の持続的な成長と競争力強化に不可欠な経営戦略です。今回の成功事例は、多くの企業にとって、健康経営への一歩を踏み出す大きな後押しとなるはずです。
関連情報
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国立がん研究センターがん情報サービス: https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
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厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」: https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001225327.pdf
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アフラック生命保険株式会社: https://www.aflac.co.jp/
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株式会社日立製作所: https://www.hitachi.co.jp
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GlobalLogic Japan株式会社: https://www.globallogic.com
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ニュースリリース「アフラック、日立、GlobalLogicが職域の従業員を当事者としたキャンサーエコシステムの構築に向けた協創を実施」(2023年9月12日): https://www.aflac.co.jp/news_pdf/20230912.pdf
