一人社長が描く、地域と世界をつなぐSDGsの輪
神奈川県大和市に拠点を置く小規模事業者「マシマロワークス」は、たった一人の社長が主導するチャリティー活動を通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献しています。チャリティーシートクッションの販売利益を全額「パレスチナのハート アートプロジェクト(PHAP)」へ寄付するというこの取り組みは、SDGsの「1.貧困をなくそう」「10.人や国の不平等をなくそう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」といった目標に深く紐づいています。

課題解決への一歩:一人の母親の切なる願い
マシマロワークス代表の井出氏は、4歳と1歳の子どもを育てる母親でもあります。世界中で子どもたちが悲しい出来事に巻き込まれるニュースに触れるたび、「何もできない歯痒さ」を感じていたといいます。この個人的な感情が、地域から始まる具体的な行動へと彼女を突き動かしました。

その行動のきっかけとなったのは、2024年5月に相模原駅で開催された「パレスチナのハート アートプロジェクト(PHAP)」の絵画展でした。PHAP代表の上條陽子氏に、パレスチナの子どもたちが描いた絵をモチーフにしたチャリティーシートクッションの製作を相談したところ、快諾を得てプロジェクトがスタート。この活動は、SDGsの「4.質の高い教育をみんなに」と「16.平和と公正をすべての人に」に対する市民レベルの支援としても位置づけられています。
「パレスチナのハート アートプロジェクト(PHAP)」とは
洋画家・上條陽子氏を中心に2001年に設立された市民アート団体。パレスチナ難民キャンプでの美術教室、子どもたちの絵画展、現地アーティストの支援などを20年以上にわたり継続しています。アートを通じて紛争地域の子どもたちの心に寄り添い、日本とパレスチナをつなぐ対話と理解の場を創出しています。
具体的な社会貢献モデル:チャリティーシートクッションの販売
チャリティー製品として提供されているのは、子ども向け木製ハイチェア用のシートクッションです。全6柄のうちの1柄がPHAPとの協働で製作され、パレスチナ・ガザの難民キャンプで描かれた子どもの絵から花のモチーフがテキスタイルデザインに採用されました。

このチャリティーシートクッションの利益はすべてPHAPに寄付され、ガザ在住の芸術家支援や、国内外でのアート展示・ワークショップの原資として活用されています(SDGs 10, 17)。これまでに、2025年5月には53,900円、同年11月には42,000円が寄付されました。

購入者からは、「パレスチナのハートアートプロジェクトへの寄付活動も素晴らしいと思い、購入の決め手になりました。子供が出来てから特にガザでのこどもたちの現状があまりにも辛く感じているので…。」といった共感の声が寄せられており、この温かいフィードバックが活動継続の大きなエネルギーとなっています。ユーザーは、好みの柄を選ぶ楽しさと共に、善意の取り組みに参加できるという付加価値を得ることができます。
地域との協働で生まれる新たな価値:就労支援との連携
マシマロワークスは、製品のラベル貼りや検品といった業務を、大和市社会福祉法人すずらんの会「ワークセンターやまと」をはじめ、相模原市・座間市・横浜市の就労支援事業所に依頼しています。作業頻度、数量、難易度を相談しながら、事業所に無理のない範囲で公正な対価を支払うことで、地域福祉との協働を実現しています。


この取り組みは、SDGsの「8.働きがいも経済成長も」と「11.住み続けられるまちづくりを」に貢献しており、地域における働く場の創出と経済活動の活性化に寄与しています。零細企業でも、単なる外注としてではなく、社会貢献の一環として業務委託を行うことで、地域全体の生産性向上とコスト削減(社会的なコストの低減)に貢献できる好事例と言えるでしょう。
スタートアップが学ぶべきこと:持続可能な社会貢献とビジネスの両立
マシマロワークスの事例は、スタートアップや小規模事業者が社会貢献とビジネス成長を両立させるためのヒントに満ちています。
導入のメリット
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ブランドイメージの向上と競争力強化: 社会貢献活動は、企業の信頼性とブランド価値を高めます。顧客は単に製品の機能だけでなく、その企業が持つ社会的なミッションに共感し、購入を決定する傾向が強まります。これにより、競合他社との差別化を図り、強い競争力を構築できます。
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顧客ロイヤリティの獲得: 「良いことをしている企業を応援したい」という顧客の心理は、長期的な顧客ロイヤリティにつながります。共感を呼ぶストーリーは、単なるリピーターを超えたファンを生み出します。
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生産性向上とコスト削減の可能性: 地域福祉施設との協働は、一部業務の外注を通じて一人社長の限られたリソースを有効活用し、企画やマーケティングといったコア業務への集中を可能にします。また、フェアな対価を支払うことで長期的なパートナーシップを築き、安定した業務遂行につながります。これは外注費の削減という直接的な効果だけでなく、社会課題解決への貢献という間接的なメリットも生み出します。
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地域経済への貢献: 地域内の就労支援事業所と連携することで、地域の雇用創出や経済活性化に貢献し、持続可能な地域社会の実現に寄与します。
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将来的な従業員のモチベーション向上: 創業者は「将来従業員を迎えた際には、“この会社で働けて誇りに思える”と思われる存在になりたい」と語っており、社会貢献を企業文化の中心に置くことは、従業員のエンゲージメントを高める要因となります。
導入の工夫と考慮点
マシマロワークスは、チャリティーの対象を全6柄のうちの1つに限定することで、事業としての負担が大きくなりすぎないよう工夫しています。これにより、半年に1度のペースで着実に寄付を継続するという、持続可能性を重視したモデルを確立しています。社会貢献活動を始める際には、自社のリリソースや事業規模に合わせて、無理なく継続できる範囲で取り組むことが重要です。一度に大きな目標を掲げすぎず、小さくとも着実に続けることが成功の鍵となるでしょう。
マシマロワークスの軌跡:生活の「困った!」を解決する成功事例
マシマロワークスは、チャリティー活動だけでなく、日々の暮らしを楽に、楽しく、スマートにするアイテムの企画・販売で実績を上げています。

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第一弾「レジカゴ丸ごと保冷バッグ」プロジェクト: クラウドファンディングMakuakeでリリースされ、開始12時間で目標金額を達成。Yahoo!ニュースTOP掲載やめざましテレビ出演など、大きな反響を呼びました。

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第二弾「投げこみ引きぬく洗濯・時短棚」: こちらも好評を博し、現在は楽天市場やAmazonで一般販売されています。

これらの成功は、代表の井出氏が母親としてリアルな生活の中で感じる「困った!」を起点にアイデアを形にするという、ユーザー目線に立った商品開発力が強みであることを示しています。
まとめ:社会貢献は、ビジネス成長の原動力に
マシマロワークスの事例は、「零細企業は存続が第一で、余裕があれば事業に再投資すべき」という一般的な考え方に対し、社会貢献活動がビジネス成長の強力な原動力となり得ることを示しています。日本の企業の8割以上を占める小規模事業者が、ほんの少しずつでも社会に良い行動を起こせば、それは大きなうねりとなり、社会全体にポジティブな影響を与えるでしょう。
企業が社会課題解決に貢献することは、単なる慈善活動に留まらず、ブランド価値の向上、顧客ロイヤリティの獲得、優秀な人材の確保、そして持続可能なビジネスモデルの構築へとつながります。マシマロワークスのように、できる範囲で少しずつ、ユーザーの共感とともに企業の成長と社会貢献を自然に両立させるブランドを目指すことは、多くのスタートアップにとって目指すべき理想的な姿ではないでしょうか。
関連リンク
- マシマロワークス公式サイト: https://marshmallowworks.my.canva.site/
