共同調査の背景と目的:なぜこの調査が必要だったのか
難病は、その名の通り患者数が少なく、症状も多岐にわたるため、診断が非常に難しいとされています。そのため、初期症状が出てから確定診断に至るまでに長い期間を要する「診断ラグ」が発生しやすいのが現状です。しかし、これまで難病に関する詳細なデータが不足しており、その実態は十分に解明されていませんでした。
この調査は、難病患者さんが初期症状で通院を開始してから確定診断を受けるまでの期間、つまり診断ラグの実態を定量的に評価することを目的としています。さらに、その期間中に患者さんやご家族、そして社会全体がどのような負担を抱えているのかを明らかにすることで、難病を取り巻く課題解決への貢献を目指しています。
調査結果ハイライト:データが語る診断ラグの実態
平均3.4年、長期化傾向にある診断ラグ
調査結果によると、難病患者さんの診断ラグ期間は平均3.4年にも及びます。さらに、全体の35%の患者さんが5年以上の診断ラグを経験しており、この傾向は2014年度以降、年々長期化していることが判明しました。

この数字は、多くの患者さんが診断を求めてさまよい、不安な日々を長く過ごしている現実を浮き彫りにしています。
医療費と罹患疾病数への大きな影響
診断ラグが長引くほど、患者さんの医療費が増加する傾向が見られました。診断ラグが1年未満の群と9年以上続く群とを比較すると、診断ラグ期間中の医療費には一人あたり551万円もの差がありました。これは、診断が遅れることで症状が悪化したり、合併症を併発したりするリスクが高まるためと考えられます。

また、診断ラグが長い患者さんほど、確定診断前の1年間の通院日数や罹患疾病数が多いことも明らかになっています。専門医からも、症状悪化や合併症併発の抑制には、早期診断・早期治療が極めて重要であるとの見解が示されています。
専門医療機関へのアクセス遅延
診断ラグが長い患者さんほど、難病診療連携拠点病院などの専門医療機関へのアクセスが遅れる傾向が見られました。特に、診断ラグが9年以上の群では、初期症状から専門医療機関を受診するまでに約8.2年もかかっていたことが示されています。

この結果は、非専門医と専門医との連携体制を整備することが、早期診断を実現する上で非常に重要であることを示唆しています。
この情報から何が解決できるのか?患者さん、ご家族、社会が直面する課題
今回の調査結果は、難病患者さんが直面する多岐にわたる課題を明確に示しています。
患者さん・ご家族の精神的・経済的負担
診断ラグが長引くことは、患者さんにとって病名がわからない不安や、適切な治療を受けられない苦痛を長期間にわたって経験することを意味します。ご家族もまた、介護の負担や経済的な不安を抱えることになります。早期診断は、これらの精神的・経済的負担を軽減し、患者さんとご家族の生活の質(QOL)向上に直結します。
医療システム全体の非効率性
診断ラグの長期化は、不必要な医療費の増加や、適切な医療資源の配分の遅れを招き、医療システム全体の非効率性を生み出します。早期診断・早期治療が実現すれば、長期的な医療費の削減に繋がり、限られた医療資源をより有効に活用できるようになるでしょう。
生産性向上、コスト削減への示唆
難病による症状が原因で、患者さんは学業や仕事に支障をきたすことがあります。診断が遅れることで、社会参加の機会が失われたり、生産性が低下したりする可能性も高まります。早期診断は、患者さんが早期に社会復帰し、その能力を発揮できるよう支援することで、社会全体の生産性向上にも貢献します。これは、長期的に見て社会保障費の削減や、経済活動の活性化といった大きなメリットをもたらします。
スタートアップが学べること:データ活用とイノベーションの可能性
この調査結果は、ヘルスケア分野のスタートアップ企業にとって、大きなビジネスチャンスと社会貢献の可能性を示唆しています。
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AIを活用した診断支援ツールの開発:画像診断や電子カルテデータから難病の兆候を早期に発見するAIツールの開発は、診断ラグ短縮に大きく貢献するでしょう。
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患者向け情報提供・サポートプラットフォーム:難病に関する正確な情報提供や、専門医へのアクセスを支援するプラットフォームは、患者さんの「診断迷子」を防ぎます。
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医療機関連携ソリューション:非専門医と専門医が円滑に連携できるような情報共有システムやコンサルティングサービスは、専門医療機関へのアクセス遅延という課題を解決する鍵となります。
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データ駆動型ヘルスケアサービス:JMDCが持つようなビッグデータを活用し、難病の早期発見アルゴリズムを開発したり、個別化された治療計画を提案したりするサービスは、競争力強化に繋がります。
これらの取り組みは、外注費削減や業務効率化に貢献するだけでなく、新たな価値を創造し、社会課題の解決に直結するイノベーションを生み出す可能性を秘めています。
今後の展望:JMDCが目指すヘルスケアの未来
JMDCは、今回の共同調査で得られた知見を基に、難病の早期診断・早期治療への貢献を目指していくとしています。同社は、このようなアンメット・メディカルニーズ(未だ満たされていない医療ニーズ)の解決に向けた取り組みを、製薬企業だけでなく、医療従事者、患者さん、アカデミア、行政など多様なステークホルダーと連携しながら展開していく方針です。
JMDCは、15億7,300万件以上のレセプトデータと7,600万件以上の健診データ(2025年3月時点)という膨大な医療ビッグデータを有しており、これを活用することで、希少疾患領域の課題解決や治療環境整備に貢献することを目指しています。データとICTの力を通じて、持続可能なヘルスケアシステムの実現という未来を描いています。
まとめ:早期診断がもたらす大きなメリット
難病における診断ラグの長期化は、患者さんやご家族に多大な負担を強いるだけでなく、社会全体にとっても医療費の増大や生産性の低下という形で影響を及ぼしています。今回のJMDCとアレクシオンファーマによる共同調査は、この課題を定量的に明らかにし、早期診断がいかに重要であるかを改めて示しました。
早期診断が実現すれば、患者さんは適切な治療を早期に受けられることで症状の悪化や合併症を防ぎ、医療費の負担も軽減されます。また、病名がわかることで精神的な安定にも繋がり、より質の高い生活を送ることが可能になります。医療システム全体としても、効率的な医療資源の配分や、社会全体の生産性向上に貢献できるでしょう。
この調査結果は、私たち一人ひとりが難病という課題に目を向け、データとテクノロジーの力を活用して、より良いヘルスケアの未来を共創していくための大きなヒントを与えてくれます。詳細な調査報告書はこちらでご確認いただけます。
JMDCに関する情報は、公式サイトをご覧ください。
