喫茶店が直面する「くつろぎ」の多様化という課題
現代社会では、人々のライフスタイルや価値観が大きく変化し、喫茶店に求められる「くつろぎ」の形も多様になっています。単にコーヒーを飲む場所としてだけでなく、勉強や仕事、友人との交流、あるいは一人で静かに過ごすパーソナルな空間としてのニーズも高まっています。従来の画一的な店舗デザインでは、こうした多様なニーズに応えきれないという課題に直面している企業も少なくないでしょう。
この課題に対し、コメダ珈琲店は次世代を担う若者たちの視点を取り入れるため、名城大学理工学部建築学科の谷田真准教授研究室と産学連携を開始しました。
顧客の声から生まれた「次世代のくつろぎ空間」
このプロジェクトの大きな特徴は、机上の空論ではなく、実際の顧客行動に基づいた徹底的なリサーチからスタートした点です。谷田研究室の学生たちは、「コメダ珈琲店 本店」で利用実態調査を実施。平日はもちろん、休日の開店から閉店まで、延べ6日間にわたり、客層や滞在時間を詳細に分析しました。
その結果、2名席が平日・休日問わず1名での利用が多く、かつ4名席と比較して滞在時間が長い傾向にあることが判明しました。これは、一人で長時間過ごしたいというニーズが高いことを示唆しています。

この「顧客の声」とも言えるデータに基づき、学生たちが導き出したのが、「1名でも2名でも長時間くつろげる、小上がりの座敷風シートエリア」というアイデアです。さらに、この座敷風シートエリア自体を目的として来店を促すという、お客様の意識変化をも目指す提案となりました。

スリット家具が拓くパーソナル空間の可能性と競争力強化
提案された「次世代のくつろぎ空間」では、コメダ珈琲店でおなじみの赤いソファに、谷田研究室が考案したスリット家具を組み合わせます。このスリット家具は、座席幅を拡張できるだけでなく、小さな机や雑誌ホルダーなどを自由に組み合わせて、利用者が自分好みのパーソナル空間を作り出せるのが大きな特長です。

この新しい空間は、顧客満足度の向上に直結するでしょう。一人で集中したい時も、二人でゆったりと過ごしたい時も、それぞれに最適な環境を提供することで、お客様はより長く、より快適に滞在できるようになります。結果として、来店頻度の増加や、口コミによる新規顧客獲得にも繋がり、ひいてはブランドの競争力強化に大きく貢献すると考えられます。
既存の店舗資産(コメダのソファ)を活かしつつ、新しいアイデアで空間価値を最大化するこのアプローチは、コスト削減や生産性向上にも繋がり、企業の持続的な成長を後押しする可能性を秘めています。
スタートアップが学ぶべきこと:顧客視点と産学連携の力
このコメダと名城大学の取り組みは、特にスタートアップ企業にとって多くの学びを提供します。
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顧客ニーズの徹底的な分析: 谷田研究室が行ったような、実際の利用状況に基づいた客観的なデータ分析は、顧客が本当に求めているものを見つける上で不可欠です。表面的なニーズだけでなく、潜在的なニーズまで掘り下げることが、革新的なサービスや製品を生み出す鍵となります。
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既存資産の再定義と活用: コメダの象徴であるソファを核に、新しい家具を組み合わせることで、既存のブランドイメージを保ちつつ、新たな価値を創造しています。ゼロから全てを開発するのではなく、既存の強みを活かす視点は、リソースが限られるスタートアップにとって非常に重要です。
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産学連携によるイノベーション: 大学の研究室と連携することで、専門的な知見や若い世代の柔軟な発想を取り入れ、自社だけでは生まれにくいイノベーションを創出しています。外部の知恵を積極的に活用する姿勢は、競争力を高める上で有効な戦略です。
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ユーザー体験デザインの重要性: 「街のリビングルーム」としての喫茶店の役割を再認識し、お客様が心から「くつろげる」体験をデザインする視点は、あらゆるサービス業において重要です。
新しい試みにおけるデメリットと課題
どんな革新的な試みにも、導入における課題は存在します。例えば、既存の全店舗にこの新しい空間デザインを導入するには、初期投資がかかることが予想されます。また、新しいタイプの座席が既存の顧客層にどのように受け入れられるか、あるいは新たな顧客層をどの程度獲得できるかといった、マーケティング上の検証も必要となるでしょう。しかし、これらの課題を乗り越えることで、より強固なブランドと顧客基盤を築くことができるはずです。
1日限定のお披露目イベントで未来を体験!
この「次世代のくつろぎ空間」は、2025年12月23日(火)に名城大学天白キャンパスの研究実験棟IV 1階エントランス付近で、1日限定でお披露目されます。
イベントでは、コメダのキッチンカーも来校し、「いつものコメダメニュー」を提供しながら、谷田研究室による新しいくつろぎ空間を演出します。この機会に、未来の喫茶店の形をぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

イベント概要
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日時: 2025年12月23日(火) 11時~14時 (家具設置: 10時30分~16時30分)
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場所: 名城大学天白キャンパス 研究実験棟IV 1階 エントランス付近 (名古屋市天白区塩釜口1-501)
まとめ:顧客視点が拓く喫茶店の新たな価値
コメダ珈琲店と名城大学の産学連携は、喫茶店が提供する「くつろぎ」の価値を現代のニーズに合わせて進化させる、意欲的な取り組みです。顧客の行動データを深く読み解き、それに基づいて空間をデザインするというアプローチは、単なる店舗改装に留まらない、本質的な顧客体験の向上を目指しています。この事例は、顧客視点に立った課題解決と、異分野連携によるイノベーションが、企業の競争力強化にどれほど貢献するかを示唆するものです。多くの企業にとって、自社のサービスや製品を再考する上で、貴重なヒントとなることでしょう。
