高島屋文化基金、2025年度の美術賞受賞者と助成先を決定!文化芸術の未来を育む新たな才能と活動を支援
2025年11月14日、公益信託タカシマヤ文化基金運営委員会において、第36回(2025年度)タカシマヤ美術賞の受賞者と団体助成先が決定しました。この発表は、日本の文化芸術の発展に貢献する新たな才能と、美術館の革新的な取り組みを後押しするものです。
文化芸術を支える高島屋文化基金の役割
高島屋は、1909年の「現代名家百幅画会」開催や1911年の美術部創設以来、人々の暮らしに美と文化を提供し続けてきました。その歴史と伝統を受け継ぎ、1990年に設立された公益信託タカシマヤ文化基金は、新鋭作家や美術文化の保存・発掘・振興に寄与する団体への助成を続けています。
この基金の大きな特徴は、一作品に対する賞ではなく、作家のこれまでの活動と将来性を評価して選考する点にあります。これにより、単なる一時的な評価に留まらず、才能あるアーティストの長期的な活動を支え、文化芸術界全体の活性化に貢献することを目指しています。毎年、「タカシマヤ美術賞」として作家には一人200万円、団体に対しては各回総額200万円を上限とした助成が行われています。
2025年度タカシマヤ美術賞受賞者:未来を担う3名のアーティスト
今回、タカシマヤ美術賞を受賞したのは、陶芸の堀貴春さん、彫刻の七搦綾乃さん、現代美術の潘逸舟さんの3名です。それぞれが独自の表現で美術界に新風を吹き込んでいます。
堀 貴春さん(陶芸)

堀貴春さんは、具象的なモチーフで作品を制作し、その造形の完成度やシャープさで際立った存在感を示しています。特に虫形の造形にデフォルメを加えることで、現実とは異なる魅力的な形へと昇華させています。大型の虫形立体造形から食器まで、一貫した世界観と美意識が作品に現れています。
1996年東京生まれ。2019年にはテーブルウェア大賞「大賞・経済産業大臣賞」を受賞するなど、若くしてその才能が認められています。


七搦 綾乃さん(彫刻)

七搦綾乃さんは、木彫という豊かな歴史を持つ分野において、何にも似ていない独自の作品を生み出し、新たな世界を切り開いています。枯れたバナナの茎と布を被った人物を組み合わせた作品は、静物と人物、隠れたものと露出したもの、若さと老いといった多様な二項対立を含み、観る者に深い問いかけを促します。
1987年鹿児島生まれ。2023年には「VOCA展2023」でVOCA奨励賞と大原美術館賞を受賞するなど、現代美術シーンで注目を集めています。

潘 逸舟さん(現代美術)

潘逸舟さんは、中国で生まれ幼少期に青森へ移住した経験から、日本で育まれたアイデンティティーを出発点としています。社会と個人の関係から生じる疑問や戸惑いを考察し、映像、パフォーマンス、インスタレーション、写真、絵画など、多岐にわたるメディアで作品を発表しています。国境やイデオロギーを超えた芸術による対話をもたらすアーティストとして、今後の活躍が期待されています。
1987年上海生まれ。2020年には日産アートアワードグランプリを受賞するなど、国際的な評価を得ています。


文化芸術の発展を支える団体助成:3つの美術館プロジェクト
今回の団体助成では、東京都美術館、ワタリウム美術館、東京都現代美術館の3団体が選ばれました。これらの助成は、各美術館が企画する重要なプロジェクトの実現を支援し、文化芸術の多様な側面を社会に届ける役割を担います。
東京都美術館:開館100周年記念シンポジウム

東京都美術館は、2026年に開館100周年を迎える日本初の公立美術館です。助成金は、開館100周年記念事業の一環として開催されるシンポジウムおよびレクチャーシリーズに活用されます。この事業では、同館が掲げる「すべての人に開かれたアートへの入口となる」というミッションのもと、「関わりの回路づくり」「ケア」「アクセシビリティ」といったキーワードから、アート・コミュニケーション事業の実践を振り返ります。公共美術館の役割の変遷と、これからのあり方について、専門家を招いて議論を深める貴重な機会となります。
美術館が「見るためだけの場所」から「共に過ごし、共につくる場所」へと広がる可能性を社会に提示し、普段美術に触れる機会の少ない方にも関心を持ってもらうことを目指しています。
ワタリウム美術館:シンポジウム「JUDDを考える」

ワタリウム美術館は、1990年に開館した私設美術館で、世界の現代美術や日本の文化を独自の視点で紹介しています。助成金は、2026年2月15日から開催される「ドナルド・ジャッド展|絵画、オブジェ、建築」に合わせ、同日に開催されるシンポジウム「JUDDを考える」に活用されます。
このシンポジウムでは、ジャッドの息子でありJudd Foundation共同代表を務めるフレイヴィン・ジャッド氏をはじめ、国内の美術館館長やアートディレクターを招き、「ジャッドの作品について」「ジャッドの家具とデザイン」「マーファとアートによる街づくり」をテーマに多角的な討論が行われます。日本の美術館では約25年ぶりとなるジャッド展の理解を深めるとともに、その思想が現代社会に与える影響を探る重要な機会となるでしょう。
東京都現代美術館:国際シンポジウム「ポンピドゥ・センターの前衛展:その成果と継承」(仮称)

東京都現代美術館は、日本の戦後美術を中心に国内外の現代美術を研究、収集、展示する機関です。助成金は、現代美術館と前衛展40周年記念シンポジウム実行委員会が共催する国際シンポジウム「ポンピドゥ・センターの前衛展:その成果と継承」(仮称)に活用されます。
このシンポジウムは、1986年にパリ・ポンピドゥ・センターで開催された「前衛芸術の日本1910-1970」展の40周年を記念するものです。過去最大規模の海外における日本展であったこの展覧会を、フランスと日本からの登壇者を迎え、美術史や美術交流史の中に位置づけ、次世代の学芸員や研究者に継承することを目的としています。この議論を通じて、日本の前衛芸術が海外の芸術動向を受容しつつ、いかに独自のアイデンティティーを模索したかについて、新たな研究の地平が開かれることが期待されます。
文化芸術への投資がもたらす長期的なメリット
高島屋文化基金によるこれらの支援は、単に資金提供に留まらない、多岐にわたるメリットを社会にもたらします。
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新しい才能の育成と発掘: 新進気鋭のアーティストが経済的な心配なく創作活動に専念できる環境を提供することで、より質の高い、革新的な作品が生まれる土壌を育みます。これにより、将来的な日本の文化芸術の競争力強化に貢献します。
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文化施設の活性化と社会貢献: 美術館が開催するシンポジウムや展示は、一般市民が芸術に触れる機会を増やし、教養を深める場となります。特に、アクセシビリティやケアといった視点を取り入れたプロジェクトは、多様な人々が文化を享受できる社会の実現を後押しします。
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学術的・歴史的価値の継承: 過去の重要な展覧会を振り返るシンポジウムは、美術史研究の深化に貢献し、次世代の研究者や学芸員に貴重な知見を継承します。これにより、未来の文化イベントや企画の質を高める基盤が築かれます。
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ブランド価値の向上と顧客エンゲージメント: 高島屋が長年にわたり文化支援を続けていることは、企業の社会貢献活動として高く評価され、ブランドイメージの向上に繋がります。文化を愛する顧客層からの共感を呼び、長期的な信頼関係を構築する上でも重要な役割を果たします。
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間接的な生産性向上とコスト削減: 基金が専門家による運営委員会を組織し、厳正な選考を行うことで、高島屋自身が個別のアーティストやプロジェクトを評価する手間やコストを削減できます。また、文化的な豊かさは人々の創造性やQOLを高め、間接的に社会全体の生産性向上にも寄与するでしょう。
まとめ:文化の未来を育む高島屋文化基金
高島屋文化基金の活動は、新鋭アーティストの創作活動を支え、日本の美術館がより開かれ、深みのある活動を展開するための重要な礎となっています。今回の受賞者と助成先の決定は、日本の文化芸術が多様な形で進化し続けるための大きな推進力となるでしょう。
選ばれたアーティストたちの作品がこれからどのように発展していくのか、また助成を受けた美術館のプロジェクトがどのような成果を生み出すのか、その動向に注目が集まります。
贈呈式は2026年2月2日(月)に開催される予定です。文化芸術への投資が、私たちの社会をより豊かにする長期的なメリットを享受できることを願ってやみません。
