導入事例:目黒区立油面小学校が実践した「未来の運動会」
CULUMUが目黒区立油面小学校で実施したインクルーシブデザインワークショップは、目黒区教育委員会が推進する家庭教育講座の一環として、公立小学校で初めて採用された先進的な取り組みです。このワークショップは、多様な背景を持つ人々が共に楽しめる運動会を構想することをテーマに、保護者と教員が立場を超えて多様性への理解を深める貴重な機会となりました。

ワークショップの具体的な内容
当日は、保護者と校長先生を含む19名が参加し、デザイン思考のプロセスを活用してワークショップが進行しました。
1. 「言葉を使わない」協力ワークで前提の違いを体感
導入のアイスブレイクでは、チームごとにレゴブロックで一つの家を作るワークが行われました。この際、「会話禁止」というルールに加え、参加者それぞれに秘密の「個別のルール」が与えられました。これにより、同じ目標を持ちながらも個々の前提が異なることで生じる摩擦を疑似体験。「なぜあの人はあんな行動をするのか?」を想像し、互いの背景を知ろうとする姿勢の重要性を共有しました。

2. ペルソナになりきり、潜在的な課題を発見
本編では、CULUMUが独自開発した『インクルーシブペルソナカード』が活用されました。「車いすを利用する祖母」「日本語が不慣れな保護者」「聴覚過敏のある児童」といった具体的な人物像を設定し、チームで徹底的に当事者視点に立って対話を行いました。自分たちの視点だけでは見過ごしていた「困りごと」を可視化し、それを解決するためのアイデアを具体化していきました。

3. 「競争」から「共生」へ。新たな価値の提案
各チームからの発表では、「勝敗を競うだけが運動会ではない」という視点から、「応援すること自体を競技にする」「休憩スペースをエンターテインメント化する」など、従来の枠にとらわれないユニークなアイデアが次々と生まれました。参加者全員で多様な参加のあり方を議論し、『誰一人取り残さない』ための具体的なアクションプランが共創されました。
導入の成功事例から見えてくるメリット
このワークショップを通じて、学校経営方針とインクルーシブな考え方が合致し、参加者の意識に変革がもたらされました。
目黒区立油面小学校の衣非まさ子校長は、「今ここにいる子どもたちにとって、どんな運動会が相応しいのかという原点に立ち返る貴重な機会となった」と語り、「競技に参加することだけが全てではない」という多様な参加のあり方を肯定する学校づくりを目指す意向を示しました。

参加した保護者からも、「様々な人の立場に立つことで、多角的に物事を見ることが社会全体を良くすることにつながると実感した」「他者と話し合うことで自分にはない視点に気づき、チームでアイデアを形にする達成感があった」といった肯定的な声が寄せられています。
教育現場における具体的なメリット
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意識改革と共感力の向上: 教員や保護者が多様な視点を持つことで、児童一人ひとりのニーズに合わせた教育環境を構築できるようになります。これは、学校全体の共感力を高め、より温かいコミュニティ形成に繋がります。
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意思決定プロセスの改善と生産性向上: 従来のトップダウンや一部の意見に偏りがちな意思決定から、多様な意見を取り入れた対話型のプロセスへ移行することで、より納得度の高い合意形成が可能になります。結果として、PTA活動や学校運営における企画立案の生産性向上が期待できます。
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競争力強化と魅力向上: 「誰一人取り残さない」という学校経営方針が具体的な活動に落とし込まれることで、学校の魅力が高まり、保護者や地域からの信頼獲得に繋がります。これは、学校のブランドイメージ強化にも寄与するでしょう。
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コスト削減と外注費削減: 外部の専門家による一方的な指導ではなく、教員や保護者自身がインクルーシブデザインの手法を学ぶことで、自律的に課題解決できる能力が育まれます。長期的に見れば、外部コンサルティングへの依存を減らし、コスト削減に繋がる可能性を秘めています。
多角的分析:なぜ今、インクルーシブデザインが求められるのか
インクルーシブデザインは、多様な人々を製品・サービス開発プロセスの上流から巻き込み、事業とアウトプットを共創する手法です。今回の事例は、この手法が「製品開発」だけでなく、「コミュニティ形成」や「組織の意識改革(マインドセット)」にも極めて有効であることを実証しました。
現代社会は、DE&I(多様性、公平性、包摂性)の推進が不可欠な時代です。インクルーシブデザインは、まさにこのDE&Iを実践するための強力なツールとなります。特に「N=1」(個々の具体的な課題)の視点から全体最適を目指すアプローチは、見過ごされがちな少数派のニーズを顕在化させ、結果としてすべての人にとって使いやすく、心地よい環境を創出します。
スタートアップ企業が学べること
スタートアップ企業にとっても、インクルーシブデザインの考え方は非常に重要です。限られたリソースの中で、いかに市場にインパクトを与え、持続可能なビジネスを構築するかは大きな課題です。インクルーシブデザインは、以下の点で学びを提供します。
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真のユーザーニーズの発見: 多様なペルソナとの共創を通じて、表面的なニーズだけでなく、潜在的な課題や「困りごと」を発見する力が養われます。これは、顧客が本当に求める価値あるプロダクトやサービスを生み出す上で不可欠です。
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共創によるイノベーション: 異なるバックグラウンドを持つ人々と共にアイデアを出し合うことで、これまでにない革新的な解決策が生まれる可能性が高まります。社内外の多様な知見を活かすことで、競争優位性を確立できます。
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社会的価値とブランドイメージの向上: DE&Iを重視した事業展開は、企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、共感性の高いブランドイメージを構築し、顧客ロイヤルティを高めます。
導入におけるデメリットと注意点(予想)
インクルーシブデザインの導入には多くのメリットがありますが、いくつかの注意点もあります。
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初期の意識改革への抵抗: 既存のやり方や考え方に慣れている組織では、新しいアプローチへの抵抗が生じる可能性があります。導入初期には、なぜインクルーシブデザインが必要なのか、その価値を丁寧に伝え、理解を深めるための時間と労力が必要となるでしょう。
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多様な意見の集約の難しさ: 多様な視点を取り入れることは素晴らしいことですが、それらの意見を全てまとめ上げ、具体的なアクションプランに落とし込むのは容易ではありません。ファシリテーションのスキルや、合意形成のためのプロセス設計が重要になります。
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継続的な取り組みの必要性: 一度のワークショップで全てが解決するわけではありません。インクルーシブな視点を組織文化として定着させるためには、継続的な学習と実践が不可欠です。導入後も定期的な振り返りや、新たな課題への対応が求められます。
まとめ:未来の学校づくりへ、一歩踏み出すために
CULUMUのインクルーシブデザインワークショップは、教育現場における「誰一人取り残さない」学校づくりを現実のものとするための強力なツールとなることが示されました。多様な視点を取り入れ、共創を通じて課題を解決するこのアプローチは、教育機関だけでなく、企業のDE&I推進やチームビルディングにも大きな可能性を秘めています。
CULUMUは、今後も教育機関のPTA活動や教員研修、企業のDE&I推進やチームビルディングに対し、『インクルーシブデザインワークショップ』の提供を拡大していくとのことです。もし、あなたの組織やコミュニティが「多様性」というテーマに真摯に向き合い、より良い未来を共に創りたいと考えているなら、インクルーシブデザインの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
インクルーシブデザインスタジオ CULUMUについて
CULUMUは、高齢者や障がい者、外国人、マタニティ、Z世代・α世代など多様なユーザー、当事者と共創するインクルーシブデザインスタジオです。5,000団体以上の非営利団体との繋がりを通じた希少な調査パネルを基に、これまでリーチが困難であった人々を含む多様な人々とマッチングと定性的な調査を提供しています。2024年度グッドデザイン賞を受賞しており、その実績は高く評価されています。

株式会社STYZ 概要
株式会社STYZは、「民間から多種多様な社会保障を行き渡らせる」をミッションに掲げ、ドネーションプラットフォーム事業、インクルーシブデザイン事業、システム開発&エンジニアリング事業の3つの事業を展開しています。企業、行政、NPO、個人との媒介となり、社会の課題解決を促進しています。
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コーポレートサイト: https://styz.io/
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ドネーションプラットフォーム事業: https://syncable.biz/
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インクルーシブデザイン事業: https://culumu.com/
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システム開発&エンジニアリング事業: https://styz.io/tech
