広大な法面が「発電所」に?防災とエネルギー問題の新たな解決策
日本は山地が多く、広大な法面や盛土が未活用地として存在しています。同時に、再生可能エネルギーの導入拡大は喫緊の課題であり、近年の豪雨や地震による斜面災害も頻発しています。これらの課題に対し、株式会社マクニカと株式会社奥村組が、画期的な解決策を提示しました。
両社は、「遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池」の実証試験を開始。これにより、これまで未活用だった法面・盛土を再生可能エネルギーの供給地へと変え、さらに斜面崩壊を防ぐ防災機能も同時に実現することを目指しています。
なぜ今、この技術が注目されるのか?
再生可能エネルギーの適地不足を解決
太陽光発電は再生可能エネルギーの重要な柱ですが、設置に適した土地が限られているのが現状です。ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、薄くて軽く、柔軟なフィルム状という特長を持っています。この特長を活かすことで、従来の太陽光パネルでは難しかった傾斜地や湾曲した場所にも設置が可能となり、広大な未活用地を発電に利用できる可能性が広がります。
頻発する斜面災害に「防災」で貢献
日本の斜面災害の多くは、雨水の浸透による地盤の軟弱化が原因とされています。今回開発された「遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池」は、遮水シートと一体化することで、斜面への雨水浸透を抑制し、斜面崩壊を未然に防ぐ効果が期待されます。発電と防災を両立できる点が、この技術の大きな強みと言えるでしょう。
実証試験の概要
奥村組技術研究所内に作られた模擬盛土に遮水シート一体型PSCを設置し、以下の項目について検証が行われます。

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場所: 奥村組技術研究所内
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検証項目:
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発電性能
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発電効率:設置環境下でのPSCの基本的な発電効率
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ロバスト性(安定供給性):天候(日射量、雨天など)の変化に対応する電力供給の能力
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耐久性
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PSC一体化構造の耐久性:長期使用や外部環境(温度、湿度、風雨など)に対する劣化耐性
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PSC保護機能:遮水シートとの一体化構造によって、PSCモジュール内部への水分浸透に対する耐性
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この実証試験を通じて、PSCの発電性能と耐久性が詳細に評価され、実用化に向けた重要なデータが得られることでしょう。
導入後のメリット・デメリット(予測)
この革新的な技術の導入は、様々な企業や社会全体に大きな影響を与える可能性があります。
導入メリット
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生産性向上と土地の多角的利用: これまで単なる未活用地だった法面や盛土が、再生可能エネルギーの供給源と防災対策の両方を兼ねることで、土地の価値と生産性が飛躍的に向上します。
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コスト削減: 再生可能エネルギーの自家発電により、長期的に見れば電力購入コストの削減が見込まれます。また、災害対策と発電設備を一体化することで、個別に導入するよりも設計・施工コストや外注費の削減につながる可能性も期待されます。
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競争力強化と企業価値向上: カーボンニュートラルへの貢献は、企業の環境への取り組みをアピールし、ブランドイメージと競争力を高めます。ESG投資の観点からも、企業価値向上に寄与するでしょう。
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地域社会への貢献: 災害リスクの低減と、安定したエネルギー供給は、地域社会の持続可能性に大きく貢献します。
導入デメリット・懸念点
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初期投資コスト: ペロブスカイト太陽電池はまだ新しい技術であり、初期の導入コストは従来の太陽光パネルと比較して高くなる可能性があります。コスト削減効果とのバランスを見極める必要があります。
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長期的な耐久性とメンテナンス: 実証試験で検証中ですが、屋外での長期的な使用における耐久性や、メンテナンスの頻度・コストについては、今後のデータ蓄積が重要となります。
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設置場所の選定: 全ての法面や盛土に適応できるわけではなく、日照条件や斜面の安定性など、詳細な事前調査と評価が必要となるでしょう。
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法規制や許認可: 新しいタイプの発電設備であるため、設置に関する法規制や許認可の整備が課題となるかもしれません。
スタートアップが学べること:異業種連携と既存課題への新視点
この取り組みは、スタートアップ企業にとっても多くの学びがあります。
- オープンイノベーションの重要性: 半導体・先端技術のマクニカと建設業の奥村組という、異なる分野の企業が連携することで、それぞれの強みを活かし、単独ではなし得ない革新的なソリューションを生み出しています。異業種連携は、新しい市場を創造する上で不可欠です。
- 既存課題への新技術の適用: 「再生可能エネルギーの適地不足」や「斜面災害」といった既存の社会課題に対し、ペロブスカイト太陽電池という先端技術と、遮水シートという既存技術を組み合わせることで、新たな価値提案を行っています。
- 未活用資源の再定義: 多くの場所で「未活用地」とされてきた法面や盛土を、「再生可能エネルギー供給地」と「防災機能を持つ土地」として再定義する視点は、新たなビジネスチャンスを見出すヒントとなるでしょう。
- SDGsへの貢献: 環境問題解決と災害対策という2つの側面から、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する事業モデルは、現代社会において高い評価と共感を得やすいです。
まとめ:未来を創る、防災とエネルギーの融合技術
マクニカと奥村組による「遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池」の実証試験は、日本のエネルギー問題と防災対策に新たな光を当てるものです。
この技術が実用化されれば、広大な未活用地がクリーンなエネルギーを生み出す場所へと変わり、同時に災害に強い国土づくりにも貢献するでしょう。初期投資や長期的な耐久性といった課題はありますが、その可能性は計り知れません。この革新的な取り組みが、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となることを期待せずにはいられません。
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